賢者の石 (創元推理文庫 641-1)

  • 東京創元社 (1971年6月10日発売)
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感想 : 23
3

ラヴクラフト批判に対するオーガスト・ダーレスの言
――「だったら自分で書いてみたら」を受けてコリン・ウィルソンが執筆した、
クトゥルー神話に則った空想科学怪奇小説。
原題は The Philosopher's Stone で、
敢えて直訳風な邦題にしたが、正確には化金石を指す――と、
訳者あとがきにあり。
化金石とは、
錬金術に用いられる、卑金属を金に変ずると信じられた想像上の物質。

Ⅰ.絶対の探求
 学究の徒ハワード・レスターと地元の名士アラステア・ライエル卿の交遊。
 ライエル卿の死後、ハワードは時の流れと長命の関係について思索。
 心理学者ヘンリー・リトルウェイの屋敷へ招かれたハワードは、
 生理学者が発見した合金を脳に埋め込む手術を受ける。

Ⅱ.夜の涯への旅
 ハワードは合金が前頭葉にもたらす刺激をコントロールし、
 「時間透視」の術を体得。
 リトルウェイ邸に保管されていた玄武岩の小立像から
 邪悪な気配を読み取ったハワードは、
 背後に横たわる「大いなる秘密」の存在を察知し、超古代史の解読に挑む……。

縄張りに引き籠もって、
ただひたすら自分にとってオモロイことだけを追究しようとするオタク青年の話。
外科手術と精神の鍛錬によって、時空間を超越した「透視」能力を獲得し、
見てはいけないものを見てしまうわけだが、
上手い具合にラヴクラフトのパスティーシュとして成立している、と言えるかも。
読んでいて一番驚いたのは、
そんな朴念仁な主人公が意外にちゃっかり恋愛まで成就させてしまうことだったが、
個人的に最も強烈な笑いのツボとなったのは、序盤、
ツングースカ大爆発の現場を訪れ、

 どこか別の銀河系から飛来した宇宙船が爆発したのであろう〔p.26〕

などと考えるくだり。
vivaコズミックホラー(笑)!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  英米語文学
感想投稿日 : 2013年10月28日
読了日 : 2013年10月28日
本棚登録日 : 2013年10月24日

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