少年愛文学選 (917) (平凡社ライブラリー お 30-1)

制作 : 高原英理 
  • 平凡社 (2021年4月26日発売)
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編者解説に曰く、清らかなイメージを付与された、
近代に発生したプラトニック・ラヴを含む
恋愛の形としての少年愛を取り扱った文芸作品集。

■山崎俊夫「市彌信夫夕化粧」(1913年)
 作者は作家で俳優(1891-1979)。
 三味線の師匠の息子・市彌(いちや)17歳には
 一つ年上の恋人・信夫(しのぶ)がいた。
 二人は度々夕刻に落ち合ってデートしていたが、
 その際、市彌はほんのり薄化粧を施すのが常だった――。

■折口信夫「口ぶえ」(1914年)
 大阪の薬種商の家に生まれ育った中学三年生、
 漆間安良(うるま・やすら)は、
 忙しく働く母と叔母に気を遣いながら、学校生活を送っていた。
 彼には気になる同級生や上級生がいて……。

■江戸川乱歩「乱歩打ち明け話」(1928年)
 同性愛経験にまつわるエッセイ。
 未熟ゆえに清らかな関係の記憶。

■倉田啓明「稚児殺し」(1915年)
 1911年1月、内省に耽り、
 度々授業をボイコットする滋野鞆雄は
 同級生の波山寛に惹かれていた。
 鞆雄は体調を崩して入院した寛を見舞ったが……。

■木下杢太郎「少年の死」(1916年)
 中学生・土屋富之助は成績不振に悩み、
 自分の美しい姉に目をつけたらしい年長の知人
 鹿田功の動向に怯える。

■武者小路実篤「彼」(1908年)
 語り手「僕」は(恐らく)念友である「彼」から
 相談を受ける。
 「彼」は仲間うちでモテモテの美形だが、
 ある女性と強引に関係を持ってしまい、
 そのことで悩んでいた。

■稲垣足穂「RちゃんとSの話」(1924年)
 四年生Sの心を捉えて離さない、
 ハイカラなハンカチを持った可愛らしい下級生
 Rちゃん(=T君)について。

■堀辰雄「燃ゆる頬」(1932年)
 17歳になった「私」は高校の寄宿舎で暮らし始め、
 一つ年上の同級生・三枝(さいぐさ)と出会った。
 「私」は美しい頬を持つ彼と夏休みに旅に出たが……。

■大手拓次「沈黙の人」(1908年)
 神田錦町の料理屋・勝見楼の御曹司、太田惣一18歳は
 二つ年下の吉川吉次さんに岡惚れ。
 一年間思い詰め、ようやく恋文を送ったものの……。

■村山槐多「ある美少年に贈る書」(1915年)
 散文詩。
 作者自身の同性の友人宛の熱烈なラヴレター。

■川端康成「少年」(1948年)
 抄録(作者の自伝的小説の抜粋)。
 寄宿舎のルームメイトと
 恋人同士のように手を握ったり抱擁し合ったりする
 語り手「私」の、進路や金銭問題や交友関係について。

■中井英夫「夕映少年」(1985年)
 「夕暮れどきに病室を訪れる、はにかみ屋の少年」
 について語る友人のこと。

■塚本邦雄「贖(あがない)」(1971年)
 衝撃的なショートショート。
 肉体的にも精神的にも大きなダメージを受けた
 少年(青年?)の復讐譚。

■春日井健「未青年」(1960年)
 歌集の抄録。

■高原英理「青色夢硝子」(1987年)
 夢と友情の結晶装置を巡る物語。

このアンソロジーにおける《少年愛》の物語とは、
性別・性自認に関わらず
誰かが他者を愛する話ではなく、女性との性的接触を
汚らわしいが避けて通れない道と考える少年~青年が、
大人の男になる前にコドモたちだけの閉じた空間の中で
一番のお気に入り同士で睦み合う――といった型に収まる印象。
発表年が早い作品ほど、そうした傾向が強く感じられた。
自分らだけが善であり美であり、それ以外は醜いものと見なす
刹那的で短絡的な男子たち――とでも呼ぼうか。

中井英夫「夕映少年」は何度も読んでいるが
やはり素晴らしい。
一番ツボに入ったのは塚本邦雄「贖」。
掌編かくあるべし。
予想外の拾い物は薄幸の詩人、大手拓次の小説。
https://booklog.jp/users/fukagawanatsumi/archives/1/4003113314
こんなものまで書いていたのか、と。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 【アンソロジー】
感想投稿日 : 2021年5月11日
読了日 : 2021年5月11日
本棚登録日 : 2021年2月27日

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