モモ (岩波少年文庫 127)

  • 岩波書店 (2005年6月16日発売)
4.21
  • (2586)
  • (1542)
  • (1173)
  • (89)
  • (32)
本棚登録 : 25380
感想 : 1949
5

この本はずっと頭の片隅にあった本。

中学の頃、何の授業でだったのかは忘れてしまったが(たぶん国語なんだろうな)、「自分の心に残る本を紹介する」という回があった。
そのとき、とある子がこの『モモ』を紹介していた。
「”時間どろぼう”が出てきて・・・」ということぐらいしか話の内容は覚えていないのだが、当時赤川次郎とか富士見ファンタジア文庫とかくらいしか読んでいなかった自分としては、児童文学とはいえ海外翻訳物の分厚いハードカバーの本を読んでいる子がいたことに凄い眩しさを感じたことを覚えている。

そんなこともあり、自分では読んだこともないのに娘が小5のとき、おすすめ本としてこの本を購入し渡していた。
ちょうどコロナ禍の入りたてで、『モモ』が多くの人に読み返されているというのを何かで目にしたのもきっかけのひとつである。
娘はそれはもう気に入り、『はてしない物語』も読みたがり、それも本棚に収まっている。

授業で紹介を受けた1回目の機会でも、娘に渡した2回目の機会でも実際に読むところまで行きつかなかった自分だったが、3度目の正直とばかりにこのGW、娘の本棚から引っ張り出してきて読んだ。

とても、自分の生き様を見つめ直すきっかけになる一冊。
児童文学としても、訳者あとがきにあるとおり「探偵小説のようなスリルと、空想科学小説のようなファンタジー」に溢れた物語として魅力的なのだが、大人サイドにいる自分としてはそれ以上に、この効率重視でモノ・カネの豊かさに溢れた文明社会に飲まれていく大人達の姿に警告を得る。
ニノやベッポ、ジジですら何か違うと感じる節もありながら、その波に攫われてしまう。
何か違うと感じている、そうじゃないことも大事だと分かっている、という完全に丸め込まれているわけではないところが、巧妙な落とし穴であることを感じる。
少しの隙から「時間どろぼう」につけ入られ、いつの間にか負のループにはまってしまうのだ。

コスパだタイパだという言葉で効率がもてはやされる世の中。
確かにお金や時間がない気がする。
果たして本当にそうだろうかと今一度自分に問いかけるようにしたい。
理想どおりに行かない現実はあるかもしれないが、自分のするべきことに、かけるべき労力を掛けて、納得した一日を送れているか振り返れるようにしたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童書
感想投稿日 : 2024年5月6日
読了日 : 2024年5月4日
本棚登録日 : 2024年5月6日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする