最後の晩ごはん 閉ざした瞳とクリームソーダ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2019年12月24日発売)
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感想 : 44
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夜だけ営業の定食屋<ばんめし屋>を舞台にした、ちょっと不思議でほっこりした物語のシリーズも第13作。思っていたより長いシリーズとなった。

思いがけないトラブルに巻き込まれて芸能界を追われ、今は<ばんめし屋>で働く海里と、やはり過去の登山事故をきっかけに世間から離れてひっそりと<ばんめし屋>を営んでいた夏神という、それぞれ過去を背負っている二人が少しずつ前向きになってきた前作。
海里は朗読劇を毎週行っている女優・倉持悠子のとの出会いで芝居への情熱を取り戻し、夏神は戦前の料理本をヒントに、古いレシピを現代風にアレンジして客に提供するという新たなメニューに取り組んでいる。

今作はいよいよそれぞれがリスタートへ向けて本格始動するのかと思いきや、主役は事故で目が見えなくなった女性・中山瞳。
倉持悠子の朗読劇を聴きに来たという彼女は、最初こそ海里に友好的だったのだが、ある一言をきっかけに頑なになってしまう。

色々と考えさせられる言葉が今回も出てくる。
瞳のような身体的ハンディを負った方だけでない、様々な辛い状況にある人にどんな視線や言葉や態度を向けるのが正解なのか、難しい。その時々のシチュエーションや環境や心理状態によって、その人と自分との関係によって違うだろう。
それでも海里が言うように何もしない、何も返さないよりはずっと良いのではないかと思う。
また倉持悠子の『自立することは大切だけど、それが孤立とイコールになってはいけない』という言葉にもハッとさせられた。
『自立した一個の大人だと認められたい』というプライドがあまりにも先行しすぎて、本当に必要な大切な手まで自ら振り払っていないか。

このシリーズのもう一つの要素、幽霊話がなかなか出てこない、今回は無しなのかと思っていたら意外な形で登場してきた。
こういう幽霊ならありがたい。
そして瞳に一目惚れしている坂口も、少々騒々しいが正直で良い人だ。少々周囲のフォローは必要かも知れないが、懸命に前を向いている人は気持ちが良い。

肝心の夏神だが、過去の事件から世間に注目されることへの不安はまだまだあるが、それでも一歩踏み出したことは嬉しい。
次回は海里の話がメインになるのだろうか。そしてロイドは相変わらず英国紳士スタイルで二人を見守ってくれるのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ドラマ ハートウォーミング
感想投稿日 : 2020年7月27日
読了日 : 2020年7月26日
本棚登録日 : 2020年7月27日

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