〈三島屋変調百物語〉シリーズ第七作。
今回は少し短く三話収録。
聞き手がおちかから富次郎に変わって二作目、挿絵も作家さんが変わって少し雰囲気が違う。
「火焔太鼓」
『どれほどの大火事であっても、たちまち鎮火する』という不思議な太鼓には恐ろしい秘密があった。
「一途の念」
気がふれて長く苦しんだ末に亡くなった母の、その苦しみの日々と死後に起きた思わぬ出来事。
「魂手形」
彷徨う魂の心残りを解消し『和魂』として成仏させる『水夫』と彼らを手伝う青年。
おちかが聞き手を務めていた第一シリーズは救いのない、ただただ恐ろしい話もあったが、今回は怖いだけでない切ないような温かいような話だった。
人が人を思う気持ち、その大きさや深さを感じた。それが大きく深い故に苦しみや悲しみもあることを知った。
この時代、血の繋がらない親子や兄弟は珍しくないのだが、家族が互いを大切に思う気持ちは血の繋がりとは関係ない。逆に血が繋がらない故の悲劇もあった。
富次郎が聞いた物語を絵にすることで『聞き捨て』る趣向も面白い。毎回、どんな絵にするのか興味が湧く。
序盤で富次郎が絵を習っていた過去が綴られ、もう一度習いたい未練も感じる。次男である富次郎は店を継がずに絵描きとして生きるのだろうか。
おちかの直接の登場はないが、嬉しい近況が伝わる。三島屋はこの報せに沸き立ち、皆落ち着かない。
しかし幸せな気持ちで閉じるのかと思われた今回は最後になって不穏な出来事が。あの『商人』だろうか。
この登場は三島屋、おちか、そして百物語の行方にどんな展開をもたらすのだろう。
※シリーズ作品一覧
(全ての作品でレビュー登録あり)
①「おそろし 三島屋変調百物語事始」
②「あんじゅう 三島屋変調百物語事続」
③「泣き童子 三島屋変調百物語参之続」
④「三鬼 三島屋変調百物語四之続」
⑤「あやかし草紙 三島屋変調百物語五之続」
⑥「黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続」
⑦ 本作
- 感想投稿日 : 2021年10月6日
- 読了日 : 2021年10月6日
- 本棚登録日 : 2021年10月6日
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