ビブリア古書堂の事件手帖III ~扉子と虚ろな夢~ (メディアワークス文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2022年3月25日発売)
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本棚登録 : 2386
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扉子シリーズとなって三冊目。
扉子が高校二年生になっている。ということは母・栞子もそれなりの年齢になっている筈なのだが相変わらず極度の人見知りで、カバーイラストの通り若々しい。そして祖母・智恵子は『老女』と呼ばれる年齢になっているが、相変わらず…というより、更に凄みが増しているように感じる。

今回の依頼は約千冊の蔵書を巡る攻防。
〈虚貝堂〉店主・杉尾が、亡くなった息子・康明が残した蔵書を相続人である高校生の孫・恭一郎に渡さず即売会で売り払うという。それを阻止したい恭一郎の母・佳穂は栞子に相談するが、その思いをよそに杉尾は恭一郎を即売会の手伝いに連れ出す。

その即売会の期間中にも事件が起こる。
①初日・映画パンフレット『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』
 パンフレットのビニールカバーに書かれたアルファベットが表すものは?
②二日目・樋口一葉『通俗書簡文』
 希少価値のある五千円札が挟まれた樋口一葉作品のうち一冊はどこに?
③最終日・夢野久作『ドグラ・マグラ』
復刻版と初版を入れ替えたのは誰?

そして肝心の蔵書の運命だが、杉尾、恭一郎、康明、佳穂、番頭・亀井など様々な思いが交錯し流転していくので目が離せない。
分かった部分と分からなかった部分があり、また結末が結末だけにスッキリ爽快とはいかない。

何といっても智恵子の不気味さ老獪さ、どこまでも見通したかのような悪魔っぷりに驚かされる。あとがきで栞子の過去の話を次回は書きたいと書かれていたが、むしろ智恵子の過去を知りたいように思う。

ちなみに『ドグラ・マグラ』は若いころに読んだ。途中何度か挫折しかかったが下巻に入ってからは物語に入り込んだ記憶がある。幸い精神に異常は来さなかったが様々な解釈が出来そうで、一筋縄ではいかない作品であることは間違いない。

※シリーズ作品
ビブリア古書堂の事件手帖(栞子)①~⑦
(レビュー投稿は⑦のみ)
ビブリア古書堂の事件手帖(扉子)①~③
(全作レビュー投稿あり)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー・名探偵
感想投稿日 : 2022年8月18日
読了日 : 2022年8月18日
本棚登録日 : 2022年8月18日

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