<藍千堂菓子噺>シリーズ第三作。
ただ前作までの詳細をかなり忘れていたので「晴太郎がいつのまにか結婚して子持ちになってる」とか、「この武家の女性だれだっけ?」などと疑問符だらけで読み始めた。ただ作品内でこれまでの物語を語られているのでその辺の疑問も解消、前作を読み返さなくても大丈夫だった。
これまでは確か、悪どいやり方で晴太郎・幸次郎兄弟を店から追い出した汚い叔父の店<百瀬屋>vs<百瀬屋>の意地悪にも負けず自分たちなりの個性を出して少しずつ商売を起動に乗せていってる健気な兄弟の店<藍千堂>という構図だったのが、この作品では「百瀬屋」も少しずつ自分たちなりの商売に専念しあからさまな<藍千堂>に対する妨害もなくなってきていた。
晴太郎の妻となった佐菜の連れ子・さちが何とも良い緩衝材になってくれている。これまでは茂吉がその役目を追っていたのだが、さちも加わってより賑やかに。
終盤は<百瀬屋>のこれまでの悪行三昧(言い過ぎか?)が自らに返ってくるという皮肉な話。これがスカッとするのではなく、何とも哀しく苦い話になってしまうのは、唯一晴太郎・幸次郎兄弟とつながっていた従姉妹のお糸が大いに関わっていたから。
しかしどの話も女性は強し。きっとお糸もこの逆境を跳ね返すだけの力を持っている筈。
しかし呑気な晴太郎が先に世帯をもったと思ったら、幸次郎の方はなかなか…。
田牧さんお得意の人情絡みではあるものの、個人的にはセンチメンタルが過ぎてちょっと胃もたれ気味。
だが人によってはこのくらいが良いのかもしれない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
時代・歴史小説 お仕事
- 感想投稿日 : 2019年5月12日
- 読了日 : 2019年5月11日
- 本棚登録日 : 2019年5月12日
みんなの感想をみる