量的研究法の欠点を補う「質的研究法」について理論と事例を紹介した本。
量的研究法では捉え切れない教育現実を、どのようにして汲み取り、新たな教育理論や実践への示唆を得ればよいのか。本書では、エスノグラフィー法をはじめとするいくつかの「質的研究法」が、理論的に解説されている。さらに、研究における具体的な活用例も紹介されている。
エスノグラフィーなどの質的研究法がどのようなものか、だいたいのイメージがつかめる。章によって判り易さに差はあるが、全体としては、質的研究法の入門書として適していると思う。量的研究法は、程度の差はあれ質的研究法への何らかの批判・疑問の上に立つものであるから、「教育研究とはいかにあるべきか」ということまで自然と考えさせられることになる。その意味では、自分の研究スタイルを見つめなおす機会にもなった。
敢えてマイナス点を述べるとすれば、「研究法」の解説に徹するのか、そこから得られた教育的知見を解説するのかが、中途半端になってしまっている印象があることか。本書の趣旨からすれば、あくまで「研究法」の解説に徹し、章によっては架空のデータを用いた方が、ずっと判り易かったのではないかと思うのだが。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
本(仕事)
- 感想投稿日 : 2013年1月5日
- 読了日 : 2004年11月12日
- 本棚登録日 : 2008年5月9日
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