ホテルの経営再建をテーマにしたヒューマンドラマ。
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設定がおもしろい。
業績不振からの脱却を託された元山靖彦は大学教授。ホテル業界はおろかビジネスとは無縁の世界にいた学究です。
専攻は心理学で、理論を実践で試すために社長職を引き受けた―― とのっけからぶっ飛んだ内容になっています。
社内改革の方法もぶっ飛んでいます。
従業員同士で評価させ、現在の所属部署がふさわしいかを選挙で決める。結果はリストラにも使う。
当然、支配人の永野はじめ従業員一同は戸惑い不審がり不満の声を上げる。
しかし元山は、そんなことなど一向に気にせず改革を推し進めるうちに……。
何と言っても核となるテーマがよかったと思います。
まず適材適所。これは共同社会で生きる人間にとっては永遠のテーマと言えるでしょう。
そもそも少ない管理職が多くの部下の適性を的確に把握するのは無理があると思います。だからこの総選挙制はある意味、理に適っていると言えるでしょう。大勢の見る目の方がブレが少ないからです。( 悪意がなければ )
だからこそ、新部署で自分の適性に気づいた従業員たちが仕事にやり甲斐を見いだせたのです。これは自然の流れでしょう。( 性悪はリストラされたが )
次に、自ら考えて動ける力を身に着けさせること。活気があり業績好調な職場にはそれができる人材が多いのは周知の事実です。
その力を養う上で肝要なことが2つあります。1つ目は、自分にとってやり甲斐のある好きな仕事に従事できていること。2つ目は、そんな自分をちゃんと見てくれている人がいる(と感じられる)こと。それにつきるでしょう。
新社長の心理学理論の実践は、見事に狙い通り的中しました。
最前線に立つ従業員ばかりか、支配人の永野までも大きく成長し、自ら的確な判断で元山を補佐できるようになりました。( 元山の適性を見抜くまでになってもいました。)
成長した従業員たちが身に着けたおもてなしマインドは、まるで故石ノ森章太郎氏のマンガ『 HOTEL 』でお馴染み「プラトンマインド」のよう。そりゃ業績は回復するはずですよね。
意表を突くような展開でまったく退屈させない、しかもサバサバしたよい作品だったと思います。
- 感想投稿日 : 2022年11月4日
- 読了日 : 2022年11月4日
- 本棚登録日 : 2022年11月4日
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