女の子の成長と、女性の間の友情がテーマ。
同じ作者では『あまからカルテット』でも同様のテーマを扱っている。
あれも見事な構想の作品ではあったし、本作でもその手法の確かさは健在だ。
けれど、テーマがより深まっているのは本作だ。
できるなら、十代の女の子たちに、この本を手に取ってほしいと願う。
新しい環境に入っていく若い人たちが大勢いるこの時期だから強く思うのかもしれない。
小学校でであった、ダイアナ(何と「大穴」!と書く)と、彩子。
未婚のキャバクラ嬢を母に持ち、金髪に染められているダイアナと、裕福で趣味のよい両親の元、何不自由なく育てられた優等生の彩子。
対照的な二人は、お互いの世界に憧れ、惹かれあう。
ほんの些細な感情のもつれと、別々の中学に進学したことから、二人はあっけないほど疎遠になる。
ダイアナの物語は父親捜しの物語。そして、「父の娘たれ」、という呪縛から解き放たれて、一時はその生き方を否定してきた母親の愛情や聡明さを発見する物語でもある。
一方、あらゆる面で恵まれていた彩子には、大学に入ってから試練が待ち受けている。
おぞましいものから大切に守られてきた娘は、自らの身を守る術をしらない。
ただ娘に門限を与え、危険から遠ざけることしか知らない両親を、お門違いと分かっていても恨まざるを得ない彼女の心情は痛切だ。
強姦サークルはしばらく前に週刊誌でも報道されていたようだけど、一部の権力を持つ男が、女をランク付けし、その上位の女を共犯関係に引きずり込みながら支配する構造に慄然とする。
この辺りは、描写で納得させるというより、やや説明的ではあったが、それでも取り上げた意味はあると思う。
彩子にものしかかる従順であれという呪縛。
それを解き放つ力の根源は、二人のダイアナだった。
やっぱり、少し出来すぎてるとは思うけど、この作品を読み終わったとき、大人になって出会い直した二人の友情が続くことを願わないではいられなかった。
- 感想投稿日 : 2017年3月30日
- 読了日 : 2017年3月30日
- 本棚登録日 : 2017年3月30日
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