奉教人の死 (新潮文庫)

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レビュー : 48
著者 :
gaha9さん  未設定  読み終わった 

1.煙草と悪魔
面白い話。悪魔の言動が好きです。
暇が興じて鍬を片手に熱心に煙草畑を栽培をする、元来怠け者の悪魔。
悪魔と人とのやり取りが面白い煙草伝来の話。
「私にした約束でも、約束は、約束ですよ。私が名を云へないものを指して、あなたは、誓つたでせう。忘れてはいけません。」
私が名を云えない物を指して~というのがとても面白い。

2.さまよえる猶太人
切支丹物、ユダヤの話。
全く興味が湧かなかった。

3.奉教人の死
長崎にある教会を追放されたキリシタンの話。
芥川は「西方の人」でキリスト教其の物に関する記述を書いていたが、キリスト教自体に興味がない人間にとってはどう解釈すればよいか困難だった。
また本書の中にはかなり難解な切支丹物が複数話収録されている。
数ある芥川の切支丹物の中でも「奉教人の死」は読み物としてとても解りやすい。

4.るしへる
「るしへる」という名の悪魔との問答。
悪魔との問答はかなり面白いですが、何せ文章が難しい。
話しの前半は殆ど分からず、悪魔との問答は大体が理解出来ました。
「わが常に「いんへるの」に堕さんと思う魂は、同じくまた、わが常に「いんへるの」に堕すまじと思う魂なり。汝、われら悪魔がこの悲しき運命を知るや否や。」
この一文に関して、他の作品でも芥川は同じ事を言っていた覚えがある。
「西方の人」か「河童」かどの作品かは忘れてしまいましたが。

5.きりしとほろ上人伝
最も強い時の権力者に奉仕しようと生きる巨人の話。
人間の権力者から悪魔、最終的にキリスト教。
これも切支丹物に入るが、物語性が強い。

6.黒衣聖母
呪われたマリア像の話。
災い転じて福となすの逆、福を転じて災いとなす。
つまり結末は祖母の死を待ち子供も死す。
救いのないホラーテイストの芥川切支丹。

7.神神の微笑
よく解らない話。短編ですがあまり覚えていない。

8.報恩記
京で有名な盗人に恩を返す話。
命の恩人の両親に大金を用意した盗人に、息子が身代わりになり打ち首となる。

9.おぎん
芥川の切支丹作品。「奉教人」よりもこういった作品の方が好きです。
同収録の「おしの」もそうですが、こういった多角的な視点からキリスト教を素材とした芥川の切支丹作品はとても面白いです。

切支丹として育ての親諸共、死罪に処されるおぎん。
寸でのところでおぎんは「教えを捨てる」と言い死罪を免れる。
理由は自らの身の保身ではない。殉死すれば自らは天国に行く事になるが、それではインフェルノ(地獄)にいる生みの両親に会えない。それは耐えられない。
そういって磔になっている育ての両親にも教えを捨てるように促すおぎん。「皆で悪魔にさらわれよう!」と。
そんなラストシーンは圧巻の迫力ある描写。
「お父様! いんへるのへ参りましょう。お母様も、わたしも、あちらのお父様やお母様も、――みんな悪魔にさらわれましょう。」
孫七はとうとう堕落した。

10.おしの
切支丹物。おぎん同様に好きな作品。
病魔に蝕まれた息子を見舞って欲しいと神父に嘆願しにきた妻が神父の説法を聞かされる話。
暗い教会の中で、夫の武士道とキリストの生き様を比較し、キリストを心底軽蔑し激しく憎悪する妻の描写は全く持って素晴らしい。

有名なキリストの最後。天を仰いで「エリ、エリ、ラマサバクタニ(わが神、わが神、何ぞ我を捨て給うや?)」
この最後を聞いた妻が、
「天主ともあろうに、たとい磔木にかけられたにせよ、かごとがましい声を出すとは見下みさげ果てたやつでございます。」
短い作品ですが何度も読んでしまいます。
妻の怒りと憎しみに満ちた言葉の痛快さに、やはり芥川文学の偉大さを再認識します。
そんな言葉の一つ一つをとても美しいと感じてしまう。それが芥川の文才。

11.糸女覚え書
古文でほぼ読解は出来ません。
「るしへる」よりも難解で何となく察する事すら出来ません。

レビュー投稿日
2019年5月6日
読了日
2019年5月17日
本棚登録日
2019年5月6日
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