幸福の哲学 アドラー×古代ギリシアの智恵 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2017年1月18日発売)
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感想 : 35
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アドラー心理学に関する本は最近よく書店で目にするが、実際に読んだのは初めてだった。アドラーについては、人生を生きやすくする自己啓発本などで引き合いに出されることが多いと感じていただけに、自己責任論ともとれるシビアな記述に意外な思いも抱いた。

アドラーは「患者を依存と無責任の地位にに置いてはいけない」といっている(
『人生の意味の心理学』)。患者を無責任の地位に置いてはならないのは、自分の選択以外のことに生きづらさや不幸の原因を見れば、患者自身の責任が見えなくなってしまうからである。(p106-107)

これは自己責任論ともとれそうだが、一方でこうも言っている。

自己責任論の名の下に「あなたの不幸はあなた自身が選んだものだ」「病んだのは本人のせいだ」という人がいる。
しかし、本来、「責任は選ぶ者にある」という時、その意味は自分の行為について、その選択の責任は自分にあるということだ。「あなたが選択したのだから、その選択に伴う責任はあなたにある」と、選択したことで窮地に陥った人を責めたり、そのような人を自己責任だとして、救済しないことの理由にするのは間違いである。(p112-113)

ちょっと分かりづらい。いったいどっちなんだ、と言いたくなる。選択の責任は本人にあるが、それを責めるべきではないし、救済しない理由にもしてはならない、ということか。
ただ貧困状況にある人にとって人生の選択肢は限定されて見えることも事実だろう。それを「選んだ責任はあなたにある」と言うことが本当に正しいのか、と思う。

本全体としてそれほど新しい知見は得られなかった。哲学そのものの特性もあるだろうが、筆者の闘病経験や親子関係がたびたび引かれ、分かりやすくはあった一方、いずれも人生観を変える経験としてはありがちというか、もっと厳しい人生を歩んでいる人はたくさんいるわけで、その人たちに対する説得力はどれほどのものだろうかとも考えた。またエッセーとしての色が濃く感じられ、期待していた方向性とはやや違っていたことは反省。

気になった点は時間ができたら追記する。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2021年3月17日
読了日 : 2021年3月17日
本棚登録日 : 2020年11月12日

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