冒頭に登場した変死体は早々に脇へどけられ、否応なしに組織の暗部へと巻き込まれていく主人公の苦悩の物語が延々と続く。専制国家の悲惨な現状、粛清される国民たち、盟約へと突っ走る上層部──どこまでいっても苦悩でしかない。普通なら早い段階で萎えてしまいそうなストーリーだが、徐々にペースアップして読めたのは、リーダビリティの高さ所以かな。
主人公のサムは警官だが、特異な時代設定の中ではハードボイルド色が濃く映る。共感できないし、彼の言動にもイラついた。周りの人間も嫌悪感しか感じないキャラばかり。よくこれだけ不快な人物と世界を作り上げたものと感心はするが、あまり楽しいものではない。
終盤のツイストは興味深かったが、展開が極端なので現実味に欠け、何となく拍子抜け。私の読解力が乏しいのか、全部同じ種類の悪人にしか見えず、実はコイツでしたって言われても全然ピンとこないのが微妙に悲しかった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外ミステリ
- 感想投稿日 : 2012年9月1日
- 読了日 : 2012年9月1日
- 本棚登録日 : 2012年9月1日
みんなの感想をみる