重く濃く、でも圧迫感なしにさくさく読める現代スパイ小説の良作だと思う。
ストーリーとキャラクターで読ませる作品。その窪みに謀略が埋められ、全体を通して非常にいいバランスを保っている。しかしそう実感するのは終盤で、全体像が見えない中盤は間延びしているような気がして若干退屈した。
“ツーリスト”という異常な世界で苦悩する主人公。見えない敵の見えない意図。このあたりが幾重にも渡って丁寧に描かれている。話が進むごとに沈み込み、じわじわと核心に迫る緊張感が本作品の特徴だろう。エンタメ色濃い展開であっても筆致はどっしりと落ち着いているので、都合いい展開だと邪推することもなく、芯の通った作品だという印象が強く残る。
前作よりも読みやすかった。レベルの高いスパイ・ミステリ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
海外ミステリ
- 感想投稿日 : 2011年7月7日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2011年7月7日
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