日本人と「日本病」について (文春学藝ライブラリー 雑英 12)

  • 文藝春秋 (2015年2月20日発売)
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感想 : 8
4

ボクたち日本人(と、ひとくくりにしてイイものかアレですが)の思考や行動を良くも悪くも呪縛する「日本病」というクセ・・・
ボクたちの思考や規範にはクセがある・・・
日本人特有の偏りがかかっている・・・
自分のクセが自分ではなかなか気づきにくいように、日本人特有のクセも日本人自身ではなかなか気づきにくい・・・
はて、ボクたち日本人のクセとはいったいどういうものでしょうか?
なぜ日本はあの戦争で徹底的に負け、戦後なぜ奇跡的な復興ができたのか・・・
良くも悪くも日本人のクセによる・・・
日本人論を多く残した山本七平と精神分析学者の岸田 秀の対談でそのクセを炙り出していく・・・

主な視点は3つ・・・
キリスト教、ユダヤ教、イスラム教などの一神教の方々と比較して炙り出したり・・・
山本の代表作の1つ「現人神の創作者たち」を基にした歴史観で炙り出したり・・・
精神分析で炙り出したりしていく・・・
というもの・・・

あれやこれやと書いてあるけど、一番グサリと来たのが純粋信仰・・・
これは有名な話だけども・・・
五・一五事件というのがありましたね・・・
首相の犬養毅が青年将校たちに殺害されたわけですが・・・
時の首相・・・結構なお年寄りなんですが・・・を若者たちが集団で射殺するという事件ですね・・・
これ・・・
ボクらの大先輩である当時の国民は挙って青年将校たちに共感し、助命嘆願書が殺到・・・
犯人たちへの刑は軽いものとなったんですね・・・
首相殺害してですよ・・・
腐敗した政党政治家である総理大臣は不純であり、青年将校たちは純粋だった・・・
これでダメ処刑!と嘆願書ドッサリ・・・
動機が純粋で、共感できれば犯罪者でも許してしまう・・・
不純の方がむしろ悪い、となっちゃう・・・
法より情・・・
純粋な方が善で、不純な方が悪・・・
人情系のドラマやマンガでまぁ結構見かけるパターンですよね・・・
ボクもこのパターンは何となくシックリ来ちゃう・・・
でもこれ、実は危険なわけで・・・
戦後は軍人は日本を戦争に引きずり込み、破滅を招いた極悪な存在、ということになっているけれども・・・
戦前は軍人は純粋であった・・・
純粋と思われていたことが新聞やテレビなど一般的には消されてるんですよね・・・
政治に純粋さを求めると危ない・・・
政治権力が、「不純な政党政治家」から「純粋な軍部」に移行していくわけだけど、これが大多数の国民の期待に沿うものであったこと・・・
純粋な正義漢たちに国を任せた結果、どういうことになったか・・・
それ故に誤ったのだということを忘れてはならない、と岸田も言います・・・
今もよく、不純な悪い政府に立ち向かう、純粋な正義の人たちっていらっしゃると思いますが・・・
これも気をつけないといけませんね・・・
ボクたち日本人は純粋信仰に陥りやすい・・・
純粋な人たちが誤らないというわけではない・・・
純粋はイイモンで不純はワルイモンとスグに考えないように気をつけないといけませんね・・・
とは言うけどこれが日本人特有のものなのか、ボクにはわかりませんが・・・

あとは・・・
断章取義・・・
日本の組織、集団は擬似血縁集団で共同体になっちゃう・・・
結果における平等主義・・・
などなど・・・
読んでてまぁ確かに、と何だか納得しやすい話が多かった・・・
全てこれこの通りなんて思わないけど・・・
ボク(たち日本人)が何かモノを考える時、行動する時に、そう思うのは、そう行動するのは・・・
こんな偏りがかかっているかもしれないから一旦注意してみよう、という気づきになりましたね・・・
ええ・・・
面白かったです・・・

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会
感想投稿日 : 2015年5月28日
読了日 : 2015年5月28日
本棚登録日 : 2015年5月28日

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