明日を拓く現代史

著者 :
  • ウェッジ (2013年4月1日発売)
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『未来の課題を知ろうとするには、現在の制約や、可能性に通じていなくてはならない。そして現在の仕組みや慣習、外交関係が何ゆえこのようなものであり、それ以外のものでないのかを知ることは、今日に至るまでの前史を知らなくてはならない』
ということで・・・
日本の将来を見据えるために・・・
特には今後の日米関係をどうしていくか、米国とどう付き合っていくべきかを考える上で参考にするべく・・・
第二次大戦後の米国、英国、中国を中心に、著者が重要とする歴史(現代史)を振り返る・・・

まず最初に日本が国としてまだ若さに溢れていた頃を振り返る・・・
1964年の東京オリンピック・・・
そのエピソードは、当時の熱気を体験していないボクら世代(30前後)にとっては、あぁ、皆さんこんな風に感じていたんだな、というのが伝わってきて新鮮・・・
焼け野原からたった19年で、よくぞあそこまで・・・
という感慨が伝わってくる・・・

次に、その東京五輪にいたるまでの・・・
国際社会(西側陣営)への復帰、アジア唯一の先進国の仲間入りまでの日本の苦労と、米国の日本に対する多大な支援が書かれておる・・・
もちろん米国に思惑はあるにせよ、日本が立ち直るのに、本当に手取り足取りで様々な支援をしてもらったという事実は知っておかないといけませんね・・・
しかも、その道のりは順調では決してなく、欧州各国、特に英国なんかむしろ反対していた中で、米国は諸々取り計らってくれたわけで・・・
ありがたいな、と・・・
米国に対してはいろいろ思うところもあると思うけども、この点は忘れてはならないんだな、と・・・
米国は・・・
国益に適うならば、いろいろと手を差し伸べてくれる・・・

それから一方で・・・
飛び飛びになるけれども、中国の虎狼っぷりも書かれている・・・
中国とインドの戦争について・・・
そして、実数は不明ながら3000~4000万人が犠牲になった毛沢東時代の大躍進政策についても・・・
著者は言いたいのでしょう・・・
中国(共産党)の本質はコレらだよ、と・・・

そして、一番面白かった米国と英国について・・・
かつては世界の覇権国だった大英帝国・・・
第二次大戦でハンパない消耗をしちゃって・・・
米国が大英帝国を追い抜いて覇権を握っていく・・・
というイメージでしたが・・・
いやいやそんな単純ではなかった・・・
大英帝国に最後のトドメを刺したのは他ならぬ盟友の米国だった、という・・・
決して自然に米国が覇権を握ったわけではなく・・・
米国が明確に意志を持って、大英帝国から覇権を奪っていく様が見て取れちゃう・・・
いやー、マジで英国の足元を見まくってますね・・・
えげつないですよ・・・
でも、凄みを感じる・・・
スゲーよ米国・・・
そして、大英帝国から覇権を奪いつつ、戦後世界の秩序作りをしていきます・・・
それがブレトン・ウッズ体制・・・
IMFは短期の資金融通、世界銀行は長期、という役回りだったのね・・・
知らんかった・・・
そのIMFの規約でドルに特別な地位を与え、ポンドを基軸通貨の玉座から引き摺り降ろし、ドル本位制が誕生する・・・
この権力移行劇がたまらなく面白かった・・・

そしてその後・・・
覇権国でなくなり、米国にプライドをズタズタにされた英国だけども・・・
スエズ危機で米国と対立した時、経済的合理性、国益を重視し、キチッと米国と関係を修復していく決断を取る・・・
ここが英国の凄いところで・・・
自分を追い落としていった米国だろうと、国益に適うならば、求められるがまま追従することも厭わない・・・
むしろ先回りして米国に恩を売っていく・・・
米国と付き合う上で、このへんのところを日本も参考にしていくべきだと・・・
となってるけども・・・
日本も既に十分すぎるほどに従順ですからね・・・
先回りして恩を売って、米国から頼りにされ、あとから見返りをもらうぐらいにならないと、ってことですかね・・・

と、ざっくりこんな感じですけれども・・・
用はおそらく・・・
今後も米国と同盟堅持・・・
インドや豪州などと連携を取りながら、中国にはユメユメ油断しないこと・・・
この路線でいきましょう、という著者の考えが滲み出てくる本・・・
米国が支援してくれまくった話や、米国が英国から覇権を奪い去って戦後世界の秩序を作り上げていく話は読んでおいて損はないと思うし、読み物としても面白いのでオススメちゃん・・・

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2013年11月9日
読了日 : 2013年11月9日
本棚登録日 : 2013年11月9日

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