フラッシュ・クラッシュ Flash Crash たった一人で世界株式市場を暴落させた男 (1)
- KADOKAWA (2020年11月27日発売)
アスペでゲーマーの中堅大卒男が新聞の募集広告きっかけにプロップ指数トレーダーになり異様な集中力とパターン認識力で頭角を現す。稼いだカネを使うことには興味がなく、ひたすら自己のポジションを巨大化することに没頭する。
独立してどんどん巨大化。そのうちに市場を席巻するアルゴリズムをやっつけようと見せ玉を駆使し始める。アルゴリズムに勝つためだということで見せ玉の規模やインパクトなどがどんどんえげつなくなり世界一レベルとなる。そんなところへ2010年にフラッシュクラッシュが発生、原因調査の過程で当局に見せ玉を駆使しまくっていた自身の存在がバレて逮捕。数十億円もってた資産の大部分が没収されてしまう。
本書の舞台となる2000年代後半から2010年代半ばあたりは当局の監視能力や規制が現実に追いついていなかったことで見せ玉が横行、見せ玉を効率よく行うためのプログラム開発、市場参加者からかすめ取るための仕組み構築など脱法的な非道邪道取引が多く行われていた。
主人公はあまりに見せ玉規模が巨大だったので逮捕は妥当なものだったと考えるが、見せしめによる逮捕といった側面もあり、本人の悪意云々ではなく時代が生み出したモンスターだと言えるだろう。
巨大企業となった高頻度取引業者などは何のペナルティもなく我が世の春を謳歌し続けており、見せ玉禁止規則を逆手にとって自社の取引アルゴの邪魔をする人間を不法取引だと当局に通報するようなことも起きているらしい。東証が高頻度取引業者の注文欲しさに高頻度取引業者優遇ルールをガバっと取り入れたのもこの時期のこと。
本書はこの事件の裁判や男の周辺を取材して構成したもの。本人への直接取材はない。板に基づく見せ玉などの具体的手法がここまで詳細に語られた本は稀であると思うので良書。
- 感想投稿日 : 2021年3月20日
- 本棚登録日 : 2021年3月1日
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