決定版 私の田中角栄日記 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2001年2月28日発売)
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感想 : 10
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今年は田中角栄氏が亡くなつてから20年といふことで、メディアでも話題となつてゐるやうです。便乗してかかる本を登場させやうと企みました。

佐藤長期政権の後を受けて誕生した田中内閣。その「今太閤ブーム」は今でも鮮明に覚えてゐます。日中国交正常化や、日本列島改造論など...さういへば、中国との外交がらみでは、パンダがやつてきて大騒ぎになつてゐました。どのくらゐ大騒ぎかといふと、当時の特撮作品『ウルトラマンエース』に、パンダを盗むだけが目的の「スチール星人」が地球にやつて来るといふ話があつたほどであります。子供心に「くだらんなあ」と思案してゐました。

それだけに、ロッキード疑獄で逮捕された時は衝撃的でしたな。金権政治の代名詞のやうにもいはれました。
まあいづれにせよ正邪両面で大物であることは間違ひないのでせう。
現在でも、日本政府が特に外交面でうまくいかない時に「今、田中角栄がいたら...」と述懐する人も多いのです。

『決定版 私の田中角栄日記』は、長年田中氏の秘書を勤め、越山会の女王と呼ばれた佐藤昭子氏の手記であります。
金権政治の権化とか、地元(選挙区)以外には傲岸不遜な態度をとるとか、一般に植ゑつけられたイメエヂとは実は正反対の人物であることを世間に知つてもらひたい、との思ひからこの手記を発表したとのことです。

田中元首相とは、公私にわたり最も身近にゐた存在の佐藤氏。それだけに田中氏の息遣ひまで聞えてきさうな、生々しい記録であります。
特に、離婚して全てを失つた著者が田中氏と再会する場面。近所でボヤがあつたせいで車が足止めになり(佐藤氏と)再会できた、もしボヤがなければ永久に会へなかつたかもといふ田中氏の言葉。青年時代の田中角栄はなかなかのロマンティシストと見た。

むろん、身近すぎて目が曇ることもあるでせう。闇将軍の実態を知らない訳はないと思ふのですが、ロッキード裁判中のくだりでも、その辺の話はほとんど出てきません。
しかし本書はさういふ点を期待してはいけない書物なのでせう。報道ではほとんど語られないので皆は知らないでせうけど、彼は本当はこんなに魅力的な人なのよ、と世間に訴へるのが眼目ではないでせうか。そしてその目的は十分に果たされてゐると申せませう。

ぢやあまた、今夜はご無礼します。

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読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 政治
感想投稿日 : 2013年12月26日
読了日 : 2013年12月26日
本棚登録日 : 2013年12月26日

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