やまゆり園事件について調べるために手を伸ばした本。
事件の全容――事件が起きる前の被告の様子から、事件の詳細、事件後の反響まで――を大づかみに知るためにはよい本。
書名の「妄信」とは、事件を起こした被告・植松聖が抱いていた「障害者は不幸しか生まない」「生きていることが無駄」といった身勝手な考えを指すのだろう。
大所高所からの理想論・キレイゴトに終始するのではなく、重度障害者をケアする施設職員や家族の置かれた苛酷な環境にまで迫っている点がよい。
苦しさも虚しさもある。だが、植松被告の犯行や思想を断じて肯定してはならない――と、ギリギリのところで踏ん張っている「現場」の人々の切実な声が胸を打つ。
また、『朝日新聞』の記者たちでさえ、遺族や周辺住民らから激しい取材拒否に遭い、取材が困難を極めた様子が赤裸々に綴られている。
マスコミを拒絶する人々に、何度も交渉を重ねては声を集めていく――その誠実な姿勢は好ましい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
殺人(ノンフィクション)
- 感想投稿日 : 2019年11月11日
- 読了日 : 2019年11月11日
- 本棚登録日 : 2019年11月11日
みんなの感想をみる