ミハイル・ゴルバチョフ 変わりゆく世界の中で

  • 朝日新聞出版 (2020年7月20日発売)
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感想 : 8
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英国におけるロシア研究の重鎮アーチー・ブラウンは、大著『ゴルバチョフ・ファクター』の中で次のように評している。

《ゴルバチョフは、ロシア史上もっとも偉大な改革者の一人であり、20世紀後半の世界史に最大の影響を与えた人物である》

旧ソ連の最高指導者(ソ連共産党書記長を経て、最初で最後の大統領に)として大改革「ペレストロイカ」を推進し、「新思考外交」で冷戦を終結に導いた偉大なリーダー、ミハイル・ゴルバチョフ。その最新の回顧録(原著は2018年刊)である。

ゴルバチョフは、すでに浩瀚な自伝をものしている(『ゴルバチョフ回想録』邦訳・新潮社)。これは、少年時代から説き起こしたオーソドックスな自伝であった。

それに対し、本書はゴルバチョフがソ連共産党書記長に就任し、ペレストロイカに乗り出したところから始まる。ゴルバチョフが〝世界の主役〟となった時代に的を絞っているのだ。

米ソの核弾頭数がピークに達したのは、1986年のこと。世界がそのまま進めば、核戦争による破滅は十分にあり得た。そうした流れに急ブレーキをかけ、世界を方向転換させた最大の立役者がゴルバチョフであった。

レーガン米大統領との間に結ばれた「中距離核戦力(INF)全廃条約」など、世界を平和の方向へと転換すべくなされた苦闘――その軌跡が本書に刻みつけられている。そこにどのような壁があり、どう隘路をくぐり抜けてきたのかが、つぶさに明かされる。

ペレストロイカを筆頭に、ベルリンの壁崩壊、東西ドイツ統一、ソ連崩壊、湾岸戦争など、1980年代後半から90年代にかけての世界の激動の舞台裏が、最大の当事者の一人であるゴルバチョフの目から振り返られていく。
それは、公式記録には載っていない秘話の連続である。

本書はまた、レーガン、サッチャー、ミッテラン、ブッシュ(父)ら、ゴルバチョフが渡り合った各国のリーダーたちの、印象深いポルトレ(人物素描)集にもなっている。歯に衣着せぬ本音の論評が随所にあり、読み応えがある。

そして終章では、大統領の座を辞してから現在までの活動――核廃絶運動や環境保護運動への取り組み――が振り返られている。

これはたんなる回想録ではない。御年89歳のゴルバチョフが、地球と世界を破滅させないため、次世代に託したメッセージの書なのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 政治
感想投稿日 : 2020年8月17日
読了日 : 2020年8月17日
本棚登録日 : 2020年8月17日

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コメント 2件

りまのさんのコメント
2020/08/23

動けたら、本屋さんに、行きます。タイミングを持って。

りまのさんのコメント
2020/08/23

図書館で借りた本が、かなり、たまっている。やばい。
のです。

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