私が「ノマドワーキング」なる言葉を初めて知ったのは、佐々木俊尚の『仕事するのにオフィスはいらない――ノマドワーキングのすすめ』(2009年)を読んだときだった。
以来約3年。目新しかった「ノマド」はあっという間に流行→消費され、昨今では苦笑まじりに口にされる言葉になりつつある。たとえば、『週刊SPA!』5/29・6/5合併号の特集タイトルは、「ノマド入門(笑)」だった。
が、語としての陳腐化とは裏腹に、広義のノマド志向は着実に世のメインストリームになりつつあるのではないか。
コワーキングスペースがどうとか、マックブックをもってスタバで仕事するのがカッコイイとか、そういう表層的なことはどうでもいいのだが、「身軽であること、なるべくモノをもたないこと、会社に縛られず自由に働くこと」を志向するノマドの基本的な考え方は、私にも大いに共感できる。世の中がそういう方向に向かうこと自体は大歓迎である。
だいたい、フリーランサーはみんな「半ノマド」みたいなものだ。私自身、一つの会社に縛られるのがイヤだからフリーで働いているのだし、モノに対する執着もごく薄い。ただし、もっぱら自宅で仕事をしているので、その点でノマドとは言えないが……。
本書は、『レバレッジ・リーディング』などの『レバレッジ~』シリーズで知られる著者が、おもにサラリーマンに向けて説く“ノマドライフのすすめ”。
以前『レバレッジ・リーディング』を読んだときに内容の薄さに驚いたものだが、本書もあっという間に読めてしまう薄い(量的にも質的にも)本だ。
一口にノマドワーカーといっても、その内実はピンキリだ。最下層にはフリーターとなんら変わらない「プアーなノマド」がいて、最上層には著者のような「リッチなノマド」がいる。
著者はハワイと東京に住まいを持ち、昨年の「6割はハワイ、4割は日本、2割をその他の国で過ごし」たのだという(これだと計12割になってしまうが、1割=1ヶ月という意味か)。
そして、昨年1年間で飛行機で18往復するような移動の多い暮らしをしながら、「会社を経営し、ベンチャー企業への投資育成に携わり、執筆活動を行い、大学などで講演し、ワインの講座をもち、トライアスロンやサーフィンといった趣味も謳歌して」いるのだとか。
いや~、じつに華麗なノマドライフですなぁ。
ま、読者が本書に背中を押されて「ノマド」になったとしても、著者のようになれる確率は測定限界以下だろうけど……。
- 感想投稿日 : 2018年10月25日
- 読了日 : 2012年6月16日
- 本棚登録日 : 2018年10月25日
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