単行本刊行時から気になっていた作品で、文庫化を機に初読。
著者久々の音楽小説である。私は萬月の音楽小説が好きで、『ブルース』を初めて読んだときの感動はいまも忘れられない。
だが、これはちょっと……。
主人公の一人・高校生の「モーゼ」こと百瀬が随所で語る音楽の薀蓄、音楽論は、面白くて傾聴に値する。
だが、青春小説として見ると、なんとも雑。地の文なしで「」書きのセリフだけで話が進む箇所が多く、ひどい手抜きとしか思えない。『ブルース』のころの萬月はもっと丁寧に作品を書いていたのに。
あと、モーゼの音楽嗜好が、どう見てもいまどきの高校生のそれではない。70年代英米ロックに古いブルースに……と、要は著者の花村萬月の趣味そのまんまなのである。「いまどきの高校生としてのリアリティ」を出そうなどとは、はなから考えていないのだ。
そのことも、ある意味で手抜きだと思う。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本の小説
- 感想投稿日 : 2018年9月28日
- 読了日 : 2018年6月25日
- 本棚登録日 : 2018年9月28日
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