風花 (講談社文庫 な 43-7)

著者 :
  • 講談社 (2000年12月1日発売)
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本棚登録 : 84
感想 : 14
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 先日観た映画版『風花』がよかったので、原作を読んでみた。

 話の骨子だけが映画と同じで、あとはまったく別物。とくに、主人公2人のダイアローグについては、原作のセリフはまったくといってよいほど映画に使われていない。

 それもそのはずで、この原作のセリフはいちいちクサイったらない。紋切り型の見本市みたいなありさまである。たとえば――。
 
《「どこで間違ったんだろうな」廉司は天井を見上げてつぶやいた。「末は博士か大臣か、とまでは言わないけど、それなりの人間になるはずだったんだけどね」》

《「子はかすがいっていうから、子どもがいれば、離婚しなかったかもしれないな」》

《「お互い人生の転機ってやつですな」》

 こういう手垢にまみれた言葉が全編てんこもりなのである。
 展開もダラダラしていてテンポが悪い。もっと刈り込んで短編にしてもよいくらい。

 いい場面もあるので、駄作とまでは言わない。とくによいのは、主人公2人が出会って北海道に旅立つまでの序盤と、余韻を残したラストシーン。
 困ったことに、肝心の旅の中味部分(全編の8割くらいを占める)がいちばん退屈。

 映画のほうがはるかによい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本の小説
感想投稿日 : 2019年4月26日
読了日 : 2008年11月28日
本棚登録日 : 2019年4月26日

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