実録! あるこーる白書

制作 : 月乃光司 
  • 徳間書店 (2013年3月15日発売)
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感想 : 58
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 「日本で一番有名な生きているアル中マンガ家」(赤塚不二夫の死去以後は、という意味)吾妻ひでおと、「日本で一番有名なアル中家族」西原理恵子が、アル中についてとことん語り合った対談集。

 カバーに「協力:月乃光司」とあるように、実質的には月乃をまじえた鼎談集である。
 月乃は20代でアル中になり、精神病棟に3回入院するなどしたあと、27歳からずっと断酒をつづけているという詩人。
 アルコール依存の専門家兼当事者として、月乃は本書全体の司会進行的役割も果たしている。

 タイトルとカバーイラストの印象から、軽いお笑い対談だと思い込む人も多いだろう。
 まあ、この2人の組み合わせだから笑える箇所も多いのだが、基本的にはごくマジメな“アルコール依存からの正しい脱出法”についての啓蒙書だ。

 随所に的確な「注」が付され、アルコール依存症についての基礎知識が身につく入門書としても優れた内容になっている。

 本書では「アル中」という言葉があえて多用されているが、いまでは「アル中」は差別表現の一つなのだそうだ。その意味で、吾妻の最新作『失踪日記2 アル中病棟』はずいぶん思いきったタイトルなのだな。

 本書は『アル中病棟』に先駆けて今年3月に刊行されたものだが、これを読むと『アル中病棟』という作品がいっそう深く理解できる。

 たとえば、『アル中病棟』は「不安だなー 大丈夫なのか? 俺……」という退院後の作者のつぶやきで幕が閉じられたが、あのように退院後に不安に襲われるのは普通だということが、本書を読むとわかる。「病気の大変さとかを理解できてるのであれば、将来に不安を感じて鬱っぽくなるくらいのほうが正常」(月乃の発言)なのだそうだ。

 『アル中病棟』同様、アルコール依存症の恐ろしさが身にしみる本である。2冊を併読するとよいと思う。

 印象に残った発言をメモ。

《一◯年アル中だった人は、その後一◯年は二日酔いだっていいますからね。いわば、壮大な二日酔いに苛まれているわけですよ。》

《「お酒の一滴くらい良いでしょ」って言うのは、覚醒剤中毒者に「覚醒剤一滴くらいなら良いでしょ」って言うのと同じなんですよ。それで火がついてダメになっちゃうんでね。》

《せっかくやめたって家族が誰も待っていない。自分が断酒しても喜んでくれる人間がひとりもいなかったら、絶対にまた飲むよね。》

 以上、すべて西原の発言。本書では総じて西原のほうが雄弁で、その言葉は重い。
 元夫の故・鴨志田穣のみならず、彼女の実父もアルコール依存症であったという。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: アルコール依存症
感想投稿日 : 2018年10月14日
読了日 : 2013年12月3日
本棚登録日 : 2018年10月14日

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