昭和45年11月25日―三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃 (幻冬舎新書)

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本棚登録 : 158
レビュー : 33
著者 :
前原政之さん 文学(作家論など)   読み終わった 

 書名のとおり、三島由紀夫自決事件の日の日本の様子を、各界著名人の反応から描き出したノンフィクションである。三島の没後40年を記念して刊行が相次いでいる関連書籍の1つ。

 ノンフィクションといっても、本書に登場する120人の著名人に、著者はまったく独自取材をしていない。当時のマスコミ報道や、各人が著書やインタビュー等で書いた(語った)言葉を時系列で再構成しているだけなのである。

 というと、「ケッ、人のフンドシで相撲をとるお手軽本かよ」と思う向きもあろう。まあたしかに、120人それぞれに独自取材する労力に比べたら、お手軽なやり方ではある。
 しかし、本書は見た目の“お手軽感”よりもはるかに手間ヒマがかかっていると思う。構成は凝りに凝っているし、そのまま引用するのではなく著者の言葉に置き換えられた部分のほうが多い。そもそも、各界著名人の反応をこれだけ集めるだけでもかなりの労力だったはずだ。

 何より、実際に読んでみると、読む前に予想したよりもずっと面白い本に仕上がっている。「ありもの」の文献や記録を再構成しただけなのに、あたかも上質のドキュメンタリー映画を観たような読後感が味わえるのだ。ありそうでなかった「コロンブスの卵」みたいな企画だが、本書の試みは成功していると思う。

 当時の著名人から、当時は無名の少年少女だったのちの著名人まで、120通りの事件への反応がモザイク状に連なって、やがて1つの大きな絵を成していく。その様子が興趣尽きない。

 自分にとっての「あの日の思い出」を持つ世代が読めば面白さ倍増だろうが(ちなみに私は当時6歳で、テレビのニュース映像をかすかに記憶しているのみ)、当時まだ生まれていなかった人が読んでもそれなりに面白いと思う。

 なお、三島事件の意味についての各界著名人の解釈をタイプ別に腑分けしたエピローグ「説明競争」が、じつによくまとまっている。このエピローグだけでも、評論として独立した価値を持つものだ。その中にある次の一節は、とくに印象的。

《三島由紀夫の死に最も誠実に立ち向かっているのは、大江健三郎だ。彼は、三島の政治思想も政治行動も全面的に否定する。文学、芸術、美学として捉えるのではなく、戦後民主主義への明らかな挑戦であると捉える。それゆえに、自分に対する攻撃と受け止め、機会あるごとに三島を否定する。》

レビュー投稿日
2018年11月14日
読了日
2010年12月5日
本棚登録日
2018年11月14日
3
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