滝田ゆう傑作選「もう一度、昭和」 (祥伝社新書)

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本棚登録 : 17
レビュー : 6
著者 :
前原政之さん マンガ/た行の作者   読み終わった 

 滝田ゆうの作品から、とくに「昭和の香り」がするものをセレクトしたアンソロジー、という趣。2007年に出たものだから、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズのヒットによる昭和回顧ブームの便乗本というところか。

 滝田の代表作『寺島町奇譚』はマンガ史に残る名作だと思う私だが、ほかの滝田作品はあまり読んでいない。家にあるのは『寺島町奇譚』のほか、『滝田ゆう落語劇場』と『滝田ゆう名作劇場』(これは昭和40年代あたりの人気作家たちの短編小説をマンガ化したアンソロジーで、なかなかよい)だけだ。

 本書は『寺島町奇譚』から4編、『泥鰌庵閑話(どぜうあんつれづればなし)』から7編、『滝田ゆう歌謡劇場』から5編を選んで編まれている。『泥鰌庵閑話』と『滝田ゆう歌謡劇場』は読んだことがなかったので、楽しめた。

 『泥鰌庵閑話』は、『寺島町奇譚』同様自伝的な内容。
 『寺島町奇譚』は自らの少年時代をモデルにしていたのに対し、『泥鰌庵閑話』は中年になってからの滝田自身がモデルになっている(と思う)。主人公のマンガ家のなにげない日常が、いまでいうエッセイ・マンガ風に描かれている。
 『滝田ゆう歌謡劇場』は、昭和の名曲歌謡曲をモチーフにした淡いタッチの人情もの。

 『泥鰌庵閑話』の一編「カストリゲンさん」に、強烈な印象を受けた。これは、主人公の中年マンガ家が少年時代を回想した作品。すなわち、“『寺島町奇譚』アナザー・ストーリー”という趣の短編なのだ。
 姉と想いを寄せ合っていた青年「ゲンさん」の無惨な晩年(学徒兵として出征し、戦地で受けた衝撃からか、帰ってきてからアル中になってしまう)を、主人公は苦く思い起こす。哀切な一編である。

 滝田ゆう入門としては好適な一冊。これを読んでビビッときたら、『寺島町奇譚』全編をぜひ。
 私も、ほかの滝田作品が読んでみたくなった。

レビュー投稿日
2018年11月2日
読了日
2011年8月2日
本棚登録日
2018年11月2日
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