絶叫委員会

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本棚登録 : 1616
レビュー : 305
著者 :
前原政之さん エッセイ&コラム一般   読み終わった 

 PR誌『ちくま』連載の単行本化。
 書名だけだと、どんな本だかさっぱりわからない。あえて一言で説明するなら、“穂村弘が一人で、エッセイ形式でやった『VOW(バウ)』”みたいな感じの本。

 「VOW」ってあるじゃないですか。『宝島』で長年つづいている(最近また本誌で連載が復活したらしい)読者投稿コーナー。街で見かけたヘンな看板とか、新聞・雑誌のヘンな誤植とか、さまざまな「ヘン」を紹介して笑うやつ。
 本書はあれを、ほむほむが出合った言葉をネタにしてやったような内容なのである。

 もちろん、優れた歌人でもあるほむほむのことだから、「VOW」より知的だし、笑いだけでなくもっと深みもある。

《名言集的なものをやってみようという意図で始めたのですが、実際に書き進むうちに、名言というよりはもう少しナマモノ的な「偶然性による結果的ポエム」についての考察にシフトしていきました。》

 「あとがき」にそうあるように、「VOW」的なネタが多く詰め込まれていながら、それが風変わりな詩論にまで発展していく側面もある。その意味では、都築響一の『夜露死苦現代詩』にも近い。

 言葉の魔術師・ほむほむが言葉をテーマにした連作エッセイなのだから、まさに自家薬籠中のもので、つまらないわけがない。ほむほむの数あるエッセイ集の中でも、上質の部類だと思う。私は何度も声を出して笑った。

 笑った(そしてそのあとに「ううむ」と唸った)一節を3つほど引用する。

《以前、「がんばってね」と書くべきところを「がんばってネ」としたために、恋人に振られた男がいる、ときいて震え上がった。「やっぱりおじさんなんだな、と思っちゃって」と振った当人は云っていた。微差だからこそ、そこに越えられない世代の壁を感じたのだろう。
 「がんばってネ」自体は優しい励ましの言葉なのに、振られてしまうなんて。怖ろしい。より親しみを込めるために半歩踏み込んだら、そこに地雷があったのだ。》

《半年ほど前に散歩をしていたときのこと。一軒の家の前でこんな貼り紙を見つけた。

「ここに糞をさせたら」

 させたら……、なんなんですか。
 なんとか云ってくれ。
 私は犬なんか飼っていないのに怖かった。》

《広告代理店に勤める友人から聞いた話。或る打ち合わせの席上で、クライアントが理不尽なことを云い出した。彼らの意向に従って修正したプランを、前言を覆すかたちで否定されたのである。
 友人は我慢したが、隣にいた同僚は堪えかねて叫んでしまった。

「でも、さっきそうおっしゃったじゃねえか!」

 懸命に踏みとどまろうとする敬語から、煌めく「ふざけんな」の世界に飛翔してしまう動きに感動。》

レビュー投稿日
2018年11月1日
読了日
2011年9月23日
本棚登録日
2018年11月1日
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