三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾

著者 :
  • CCCメディアハウス (2020年12月12日発売)
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感想 : 72
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ライター/ライター志望者にとっては大変役に立つ一級の文章読本であり、読み物(エッセイ)としても楽しめる。
つまり、実用性と娯楽性をハイレベルで兼備する離れ業をやってのけているのだ。大したものである。

全体がホップ・ステップ・ジャンプの3部に分かれている。
最初の「ホップ」は初心者向きということになっているが、読んでみれば、その部分にもかなり高度なことが書いてある。
全体にハイレベルな内容で、けっして初心者向けではない。

初心者向けの文章読本なら、ほかにもっと好適なものがたくさんある。
著者と同じく朝日出身の名文記者として知られた外岡秀俊が書いた、『「伝わる文章」が書ける作文の技術』あたりがよいと思う。

あと、著者の要求水準は少し高すぎると思う。
〝ライターたる者、◯◯くらいはできないと、プロとは言えない〟式の挑発的言辞が頻出するが、その多くは、「いや、そんなこと、プロのライターでもできていない人は大勢いるだろう」と思うもの。

つまり、著者は本書で、たんにライターとしてメシを食っていくだけではなく、抜きん出た文章家になるための心得を説いているのだ。

本書のアドバイスにはおおむね同意するが、一部に首肯できないものもある。
たとえば、常套句を「親のかたき」と思って文章から徹底排除しろと著者は言うのだが、私はそうは思わない。

常套句・紋切り型は、多用は禁物だが、少しは使ったほうが文章がわかりやすくなる。文章のすべてが独創的表現であったら、かえって読みにくいしわかりにくい。

あと、「ジャンプ」編の終盤(つまり本書全体の終盤)あたりは、抽象的でわかりにくく、蛇足だと思った。

……と、ケチをつけてしまったが、全体としてはとてもよい本だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ライター入門
感想投稿日 : 2021年2月20日
読了日 : 2021年2月20日
本棚登録日 : 2021年2月20日

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