ひろゆき(西村博之)著『2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?――巨大掲示板管理人のインターネット裏入門』(扶桑社新書)読了。
タイトルに沿った内容となっているのは、最初の「まずは結論」という章だけ。あとは、「2ちゃんねる」というよりネット全般についてのオピニオンが中心。その意味で、サブタイトルのほうが内容に即している。
冒頭に「この本は、養老孟司さんがやっていたように僕の話を文章にしてみました」とあるので、ライターもしくは編集者がひろゆきをインタビューしてまとめたものなのだろう。
そのまとめ方があまりうまくないし、しかも不親切。「2ちゃんねらー」でなければわからない言葉、ITにくわしい人でなければわからない言葉がそれぞれ頻出するのに、注はいっさいないし、文中での説明も皆無に等しい。「わかる人だけわかって下さい」という姿勢の本だ。
とくに、最終章に収められたひろゆきと小飼弾の長い対談は、私には内容の半分も理解できなかった。
そうした瑕疵はあるものの、ひろゆきの言っていることには卓見もあって、あなどれない。
ただしその多くは、人々がネットの未来に抱いている前向きな期待に冷水をかける形の「卓見」である。本書について、“梅田望夫の『ウェブ進化論』のダーク・ヴァージョン”と評する人が多いのは、そのためだ。
たとえば、こんな一節がある。
《インターネットに未来的な何かがあるということ自体が、既に誤解なのです。インターネットの未来は明るいと言っているのは、おそらくバブル世代だけではないかと感じてしまうのは、僕だけなのでしょうか?(笑)》
このように、2ちゃんねるを含むネット世界全体を醒めた目で見る姿勢が、全編につらぬかれている。2ちゃんねるについても他人事のような調子で語っていたりして、ひろゆきは終始、よく言えば飄々、悪く言えばのらりくらりとしている。そこが面白いといえば面白いし、鼻につくといえば鼻につく本。
- 感想投稿日 : 2019年5月3日
- 読了日 : 2008年10月16日
- 本棚登録日 : 2019年5月3日
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