「ゴミ屋敷奮闘記」

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本棚登録 : 40
レビュー : 6
著者 :
前原政之さん ノンフィクション一般   読み終わった 

 ライター・イラストレーター・マンガ家の著者が、ゴミ屋敷専門の清掃業者「孫の手」で2年間(取材を兼ねて)働いた体験をまとめたルポ。
 著者は「らむ」という可愛らしいペンネームだが、クマっぽい容姿のおじさんである(ちなみに、「村田らむ」は回文)。

 読んでも何のためにもならない本だし、感動できるという内容でもない。しかし、読み始めると異様な迫力に引き込まれ、最後まで一気読みせずにいられない。

 ゴミ屋敷専門といっても、「孫の手」はマンション等の汚部屋を手がけることが多い(たまには一戸建てもある)。また、部屋の住人に清掃に立ち会わせることを基本としている(捨てるものと残すものの判別をさせるためであり、「掃除のやり方を覚えてほしい」という教育的意味合いでもある)。
 その2つの特徴が、本書に類書にはない独特の味わいを与えている。

 それは、「えっ? こんな人が自分の部屋をゴミ屋敷にしちゃうの?」という意外性であり、清掃に立ち会う部屋の主とのやりとりの面白さだ。
 
 清掃した部屋の写真も随所に載せられており、それらの写真だけでも一見の価値がある。
 天井まで届く勢いで部屋を占領したゴミの山、トイレがわりに小便を入れた(ゲーム廃人がゲームをしながら小便するらしい)ペットボトルの山、一人暮らしの男の部屋から発掘されたトラック一杯のエロマンガ……。いやはや、すさまじい。いわゆる「汚部屋」のイメージをはるかに超えたゴミ屋敷の事例が、次々と登場する。

 テレビのニュース番組で取り上げるゴミ屋敷の住人には心を病んでいる人が多いのだろうが(だから、笑いものにするような取り上げ方には問題があると思う)、本書に登場するゴミ部屋の主の多くはフツーの人だ。

 フツーに会社勤めをしていて、街で会ってもゴミ部屋の主だなどとはとても思えないタイプ。意外に女性も多く、びっくりするような美人もいるという。
 しかし、部屋はすごいことになっている。そういう人たちが、なんらかの事情(工事業者を部屋に入れないといけないとか)で部屋を掃除する必要に迫られる。だが、自分の力ではとてもできないため、やむなく業者に頼むのだ。

 ゴミ部屋の主の一人は、著者たちにこう言いわけをしたという。

「ゴミがある程度の高さになったらそこにカーペットを敷いて、その上にまた机とかを買い揃えて生活してたんです。三段目がゴミで埋まってしまって、もうこれ以上はさすがに生活スペースが取れなくなってしまいました」

 ううむ……。感覚のどこかがぶっこわれている。普通に会社員として生活していても、やはりある種の病理を抱えたタイプがゴミ部屋の主となるのだろう。

 ゴミ部屋の主になるきっかけには、失恋も多いという。

《失恋のショックから落ち込んで荒れた生活を続けるうちに、ゴミ屋敷に。一人では片付けられないレベルになって、そのまま放置……というパターンだ。》

 また、ヤンキーっぽい人からの清掃依頼はほとんどなく、「男女問わず、どちらかといえばオタクな人のゴミ屋敷清掃依頼は多い」とか。
 ヤンキー・タイプは部屋に異性を呼ぶから、キレイにしておく必然性がある。それに対し、部屋に人を入れず、趣味の品をどんどん増やしていくオタク・タイプは、部屋を「巣」にしてしまいがちなわけだ。

 「奇書」ではあるが、人の営みの底知れぬ深淵を覗き込むような面白い本。

レビュー投稿日
2018年10月2日
読了日
2016年4月3日
本棚登録日
2018年10月2日
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