夕暮れへ

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本棚登録 : 26
レビュー : 1
著者 :
前原政之さん マンガ/さ行の作者   読み終わった 

齋藤なずなの20年ぶりの単行本『夕暮れへ』を読んだ。
呉智英の解説によれば、この20年間、齋藤は家族の介護と京都精華大学での講義に専念していたという。
収録作中8編までが90年代初頭に描かれたもので、これは『鳥獣草魚』以来の過去の齋藤作品の延長線上にある。

90年代に描かれた8編も、当然よい。「寸止めのリリシズム」とでも言おうか、大仰に盛り上げる筋運びではないが、平凡で無彩色な人生の中に一瞬だけ鮮やかな光彩を放つような、ほろ苦い大人のドラマである。
だが、それ以上にすごいのは、終盤に収められた、2010年代に描かれた最近作2編である。

その2編――「トラワレノヒト」と「ぼっち死の館」は、齋藤自身の介護体験を反映した作品。
老親の看取り、古い団地に頻発する孤独死などの重いテーマに正面から挑んでいる。かつてのリリシズムは後景にしりぞき、毒気の強いユーモアが全編にちりばめられている。そして、老人描写のリアリティがすごい。
90年代の8編は、過去の単行本『片々草紙』(92年刊)からの再録だそうだ。同書は現在入手困難で、私も持っていない。

古書で高値を呼んでいる『鳥獣草魚』『迷路のない町』も復刊してほしいところ。
近代日本文学の有名作家たちの恋物語を描いた短編連作『千年の夢』はKindleで読めるので、オススメ。

レビュー投稿日
2018年9月26日
読了日
2018年8月22日
本棚登録日
2018年9月26日
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