蜜蜂と遠雷

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レビュー : 1429
著者 :
gmindさん    読み終わった 

直木賞と本屋大賞のダブル受賞となった本作品。ピアノ国際音楽コンクールの話だ。500ページ以上ある長尺でその2/3はピアノ演奏シーン。「羊と鋼の森」の時に『音楽を文章で表すのはとても難しいと村上春樹が言っていたが、これはそれに挑戦し、とてもうまくいってる話だ。なんと繊細で奥の深い世界でしょう。ワタシのようなシロウトから見るともう超能力者の世界ですね。少し大げさな表現なんだが、感性の豊かさがなせる技で、名文が次から次に出てくる。』
と書いたのだが、同じことがこの作品にも言える。ここまで音を文字にできるのかと感心する。もうこれ以上のものはないだろうと思うほどの出来だ。

主な登場人物、風間塵、マサル・カルロス・レヴィ・アナトール、栄伝亜夜、それに高島明石の弾くピアノの音をいろんなものに例えて表現し尽くす。一次、二次、本選と何度もコンクールはあるのでピアノシーンは多いのだが、その都度、その演奏を絶賛する。宇宙空間に行ったり、亡くなった母親が登場したり、長い物語を音で表現したり、自然を感じさせたり、旅行だったり。どれも褒め称える文章になるのでワンパターンになりそうだが飽きさせない。彼らの演奏もスゴイのだろうがこの文章もスゴイ。

音楽ものは映像だと実際に音を出せるので表現としては有利なようだが、これだけの音に対する感性を見る人の多くは持ち得ないので、不利なように見える音の活字表現が実は有利なんだと思う。

物語は少しマンガ風である。風間塵は16歳で親の養蜂業を手伝って旅行している。ピアノがない。しかし、テクニック、音感が天才的だ。オーケストラの音を聞いて、楽器の位置を返せる。その下の床は合板で補強しているから音が違うなどと言う。コンクール中に演奏そっちのけで泊まっている生花の名人を師匠と呼んで興味を持つ。少年マンガの主人公にありがちな設定だ。

演奏の絶賛ぶりもかなり大げさだ。最後の音楽シーンはこんな感じ。
『観客は圧倒され、演奏に飲み込まれそうになっていた。世界はこんなにも音楽に満ちている』『金管が、木管が、弦楽器が、ピアノが、風間塵が、亜矢が、観客が、ホールが、芳ヶ江が、鳴っている。世界が、世界が、世界が、鳴っている。興奮に満ちた音楽という歓声で。』
そっかぁ世界が鳴るのか。
笑ってしまうほど大げさなのだが、安っぽく感じない。その文章力に舌を巻く。

レビュー投稿日
2017年9月30日
読了日
2017年9月29日
本棚登録日
2017年9月29日
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