砂の女 (新潮文庫)

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本棚登録 : 10827
レビュー : 1292
著者 :
GMNTさん 小説   読み終わった 

ぶっちぎりで面白かった。
今年は没後20年に当たるそうで、そのせいか書店で見かけた帯には「ノーベル賞受賞目前だった」というようなことが書かれていて、思わず苦笑してしまったけど・・・さもありなん。

僕が読書を始めた理由は、自分よりも多く本を読んでいるはずの友人(女性)が「太宰(=昔の純文学、という意味で)とかよく読めるな・・・」と言っていたことへのささやかな反撥心からでした。
いや、それまで全然読んだことなかったのだけど。
そもそも純文学と大衆文学、ミステリ、ラノベにそこまでの差があるんかいな?と疑わしかったので。そこに線を引いて先入観を持ちたくない。
だから反撥したくなる。

この『砂の女』はまさにそんな作品でした。
質の高いミステリ、スリラーでもある。
映画で言うと、一頃流行った『ソウ』なんかの
ソリッドシチュエーションスリラー、脱出もの。

だけどそれだけじゃないよね。
「それだけじゃない部分」がほんとに良い。
現代人の「生きる意味とは?」という問いを、
喉元まで鋭く突きつけてくる。
この作品が発表された頃は、まだ戦後の焼野原の記憶が皆にあって
今や「あたりまえ」になってることが「あたりまえじゃない」、
半々ぐらいの時期。

そう考えると、この作品を読んで「あたりまえのことしか書いてないじゃん」と
もし今の我々が思ってしまうとしたなら、
それは完全に「砂」に飲み込まれているのかもしれない。
怖い。

主人公の職業も、科学的思考も全部ツボ。
趣味が昆虫採集で、新種を見つけて歴史に名を刻みたがってるんだけど、
これって現代で言うところのオタクだよなあ。
行動も思考も完全に。

昭和初期の文学と比べると、これは'60年代の作品なので非常に読み易かった。
安部さんの文章の巧みさもあって、すらすら読めました。


余談その1
映画版は岸田今日子だそうで、あまりにハマり過ぎてる。
その昔、岸田さんが主演の『この子の七つのお祝いに』という映画がありまして・・・
これも幼い頃のトラウマ映画のひとつ。

余談その2
これ、『沈黙』『フラニーとゾーイー』と同時にブックオフで
新品同様を一冊100円でDigしたんだけども、
昔の表紙は安部公房の奥さんの真知さんが描いたもの。
現在は本人の撮った写真のやつに変えられてますが、
これは昔のやつの方が絶対に良いのになあ・・・。
晩年は不仲だったそうで、そのせいかもしれないですが
新潮といいハヤカワといい、どうしてこうも昔の良い表紙を
改悪してしまうんだろうか・・・。
購買意欲が削がれるよ、ほんと。

レビュー投稿日
2013年5月1日
読了日
2013年5月1日
本棚登録日
2013年4月24日
9
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