図南の翼 十二国記 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2001年1月17日発売)
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「一国をも巻き込む程の運の強さ。」
っていう事の伏線はあまり無かった様に思うけど…
もあるし、一国民としての義務だと感じるから昇山する事は理解できるけど、覚悟を持っていたにしても、ぽっとな思い付き的な計画で家を飛び出せるのも、彼女(主人公・珠晶)の家の財産が莫大であって失敬する分があったことの事実や、現世で言えば車や飛行機のような役割を担える妖獣を飼えるだけの余裕があったからだと思うと、あまり納得しかねる事も事実。
彼女の場合は、昇山で王になれなくても、帰る場所は衣食住はしっかりできて、なおかつ人生の選択の余地は残されているから。
彼女の様に、資金や交通手段に恵まれている人ばかりではないばかりか、王になれなかったり、王になる人と知り合える偶然を掴めなかったり、王になる人と知り合い懇意にして後々の自らの生活向上の機会を掴めなかったりした人々は、帰った先に待つ人生で飢えて死んでしまう運しか残ってはいないかもしれないし、昇山の費用捻出の為に帰る先をも無くしてしまった人々もいるかも知れないんだ。そういう道しか残されていないんだと分かりきった人々からすれば、もしかしたら゛昇山=死゛にしか捉えられないかも知れないよね。だから、そんな道を選択しない気持ちが俺は分かるんだよ。

だけど、彼女が昇山の道中で心から様々な事を、葛藤しながらも学びとり、率直な正義感や人を悼む気持ちからの行動には、へそ曲がりな謙虚さの可愛さがあるけど、学ばされる事が多かった。
町があるということがどういうことなのか。
歩く先をも示してくれる道が敷かれていることはどういう事なのか。
帰属する場所が無いことはどういう事なのか。
自由とは? まっとうとは?
とか、色々と考えさせられる場面がキチンとあったヨ。
コレじゃあ、星は只の3個位だろう、ってしか思えないけど、最後らへんの護衛担当・頑丘の言葉や、色々お助け人担当・利広の正体(謎)が明らかにされる最後の場面が良かったり、最後の締めくくりが格好良すぎたりしたから、追加点2を。
一応は読んで損はない物語。

読書状況:積読 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2012年1月15日
本棚登録日 : 2012年1月15日

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