文明の生態史観 (中公文庫 う 15-9)

著者 :
  • 中央公論新社 (1998年1月18日発売)
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感想 : 103
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2011年にみんぱくのウメサオタダオ展に行った時に購入したものを、このたびついに積ん読解消しました。

総合雑誌や新聞連載をまとめたものなので、想像していたよりもずいぶん読みやすかったです。著者自身による解説が各論考の前に付されているのも理解を助けてくれました。
インド・パキスタン・アフガニスタンや、東南アジアなど、いろいろな地を自身の足で歩き、歩くたびに新たな発見があり、それをもとに著者が考えを修正・発展させていく。最初から順々に読んでいくことによって、その様子を見て取れるのも面白いです。
また、最後の谷泰氏の解説が当時の時代背景の話もあって大変わかりやすく、これを最初に読んでから全体を読むのも良さそうだなと思われました。

1955年ごろの論考が多く、今から見ると「そういう考え方は違うのではないか」と思ってしまう点もありますが、第二次世界大戦終わってまもない時代であること、海外の現地調査に行くことが今よりはるかに困難であったことを考えると、文化相対主義的ですごい論考群だったろうなぁと思いました。
個人的には大学で西洋史をかじり、歴史学や人類学などがどんどん細分化されているのをちらと目の当たりにしました。大風呂敷を広げようとすると細かいところに齟齬が出てきてしまうというのはその通りだと思いますが、梅棹さんのような広い視野で歴史や社会の成り立ちを語る視座もどんどん出てきてほしいなぁと思います(ただし、ありがちなナショナリスティックなものではなく、もっと俯瞰的なもの)

2020年が目前に迫り、梅棹さんのいうところの第一地域のあり方や価値観が絶対的ではなくなってきた今、梅棹さんが生きていらしたらどんなふうに思われるのか聞いてみたかったなあとも思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 趣味・教養
感想投稿日 : 2019年4月6日
読了日 : 2019年4月6日
本棚登録日 : 2011年10月19日

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