震災で露呈してしまったいわゆる専門家といわれる連中の限界。
そしてそれ以上に彼らの醜態・無責任さ…同じ科学者側の立場として身を切られるような辛さを中村が味わい、焦り、苦しんだのがひしひしと伝わってくる。
科学者、技術者以前に一人の人間であるということを今の彼らが忘れているという中村の危惧は世の中のあちこちに見受けられる。
地球の、生命の一部、そして人間であるからには当事者であることは免れないのに、それを忘れているような言動が彼らの、ひいては科学者への不信感につながっている。
その当事者意識を忘れることなく生命に向き合うという中村の態度は素晴らしいと思う。
現実の世界での中村に対する障害は予想以上であろうが、敢えてそれを受け止めつつ前に進もうとする彼女の心意気が良い。
清水と違ってデカルトを現状の科学の様々な問題の遠因とする見方だが、それが意識ある人たちの一般的な見解でもあるのか?(そうでないという見方も大切)
清水博、蔵本由紀、ベルタランフィ、ジャコブ、中村桂子…彼らの視点は常に謙虚で真摯であり、いかに人間が偏った見方しかできていないのかを十分に理解している。
だからこそ彼らの言葉が心に沁みるのだと思う。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
自然科学
- 感想投稿日 : 2019年11月26日
- 読了日 : 2015年9月4日
- 本棚登録日 : 2019年11月20日
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