村上春樹のせいで どこまでも自分のスタイルで生きていくこと

  • 季節社 (2020年10月22日発売)
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こういう本、大好物です。作家としての村上春樹は自身のことについても、自身のことそのものについても多くは語らない人物なので、過去のインタビューからエピソードを引っ張り、切り貼りする形になるしかない。それでもばらばらに語られたはずの言葉は並べてみると一貫した哲学を持っていて、村上春樹だと感じられることが、この作家の素晴らしさだなと思いました。また改めてこうして読んでみると、多くの言葉が印象的で、新鮮であるけれどどこか知っているようなことで。私が村上春樹の小説をほとんど読まないのは、彼に見透かされるのが嫌だかなのかもしれない。私にとって辛辣な現実が必ずフィクションの中に落とし込まれている。だから多くの人が「これは私の小説だ」と思って、村上春樹の作品を好むのだろうと思います。

村上春樹について語るのであればアメリカ文学は避けて通れないのと同じくらい、やはり村上龍は欠かせませんね。作風も性格もまったく似ていない両者だから、互いに尊敬していて、尊敬が感じられる関係の距離を保っている。どちらの作品が良い、悪いなんてことは2人の間には関係なくて、ただ互いに相手が存在し、相手の小説を自分から離れたところで読み、作品から刺激を受けている様が、わたしはとても好きなのです。とても理想的な関係だなと感じています。(絶版になっている対談本、少し前に古本屋で見かけたものの買わなかったことを思い出して、悔しい気持ちでいっぱい)

最後に。著者の書く一文一文に、春樹作品への揺るぎない尊敬と、深い愛を感じました。この本を読めてよかったです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年4月9日
読了日 : 2021年4月9日
本棚登録日 : 2021年4月9日

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