パニック・裸の王様 (新潮文庫)

3.57
  • (52)
  • (91)
  • (142)
  • (14)
  • (4)
本棚登録 : 866
レビュー : 94
著者 :
gori-laさん  未設定  読み終わった 

文章力がまずすごい。星新一のようなショートショートだろうと思って、読み始めたのが悪かった。内容が濃いし、1つの文章に含まれる情報量が多くて、なかなかページが進まない。しかもわたしが苦手とする趣向の小説だった。

「パニック」は最初だけにしっかり読んだ。それが良くなかった。特にそのネガティヴさ、動物の死を残酷に恐ろしく描写し、猜疑心溢れる主人公含める登場人物、人の醜さや汚れた部分しか描かれていない。終わってみるとネズミ問題はあまり印象に残っていない。よくここまで人を醜く書けるなと、読んでいてモヤモヤした。それほど病的な何かを感じた作品。著者は何かの問題でも抱えていたのだろうか。もしくはこれが昭和ならではの暗さなのか。。

「巨人と玩具」はあまり印象がない。最初は奇妙な少女が出てきて、少しだけ挽回を期待して読んだけど、途中の他社との競争と展開や、売り上げの浮き沈みとその細かい説明が単調で長くて飛ばし読み。最後、京子はなぜトイレでうなだれていたのだろう?自殺したかった主人公と、狂ってしまった合田。淡々と進んでいくので、終始物語の内容を理解するだけで、盛り上がりにかけた。

「裸の王様」最後のオチがイヤラシイ。四作のなかでは読みやすくてまともだったのに、自意識過剰な終わり方で評価がぐんと下がった。憎悪とか、ハメてやり返すとか、いい気味とか、、話のクライマックスと思われるラストに、こんな程度の低い思考や言動で終わるのは、あまりにも低俗すぎて落胆した。そこは高みの見物で良かったのでは?

「流亡記」一番良かった。ある小さな村の外壁の話から、どんどん広がり、万里の長城へ飛躍し、そのスケールの大きさや知識、想像力が著者の器量を表している。もちろん悲劇的で容赦無し、常に人が死に殺され希望が無いストーリーだが、それこそ実際にあっただろう歴史を元に、想像され生き生きと描かれていて、著者の文章力の高さに感嘆。憎悪や人間の醜い部分もぜんぶひっくるめ、淡々と事実だけを綴ったのが良かった。

レビュー投稿日
2018年11月18日
読了日
2018年11月18日
本棚登録日
2018年11月14日
1
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『パニック・裸の王様 (新潮文庫)』のレビューをもっとみる

『パニック・裸の王様 (新潮文庫)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

いいね!してくれた人

ツイートする