少しだけ、無理をして生きる (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2012年7月28日発売)
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本棚登録 : 719
感想 : 76
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城山さんの交友関係の広さが伺える本。

以下読書メモ
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・魅力のない人とはどういう人か、みなさんの周りを見回しても割に多いんじゃないですか?つまり、型にはまった人ですね。これは魅力がない。周りに大勢いるということは、人間はつい、すぐに型にはまった暮らしをしてしまうのです。あるいは、型にはまった人間になってしまうのです。

・つまり、魅力を作っているのは〈初心〉というものなのですね。仕事に対してだけでなく、生きていく姿勢としての初心、初々しさ、というものはいくつになっても大事なんじゃないか。

・初心を持ち続けるとは、どういうことでしょう。あるいは、ずっと初々しくあるとはどういうことでしょう。これは、自分に安住せず、自分というものを無にして、人から受信し、吸収しようとする生き方です。

・そうやって勉強して吸収していくと、当然ながら、ここはちょっとおかしいじゃないか、ってところが出てきます。自分だったらこうしたい、こうすべきじゃないかという意見が生まれてくる。それを今度は、書くのです。建白する。今の言葉で言えば、提案する、企画する。そして、上役に出す。

・〈少しだけ無理〉というのがいいのです。ごく自然にアイディアやインスピレーションが湧いたから小説を書くー―これは無理していませんね。自然のままの状態です。小説や詩はインスピレーションが湧いてこなければ書けないだるうと思うのですが、夏目漱石の『文学論』を読みますと、作家にとってのインスピレーションというのは人工的インスピレーションだ、とある。つまり、ぽんやり待っていたら何かがパッとひらめいた、じゃなくて、インスピレーションは自分で作り出すものだ。だから、インスピレーションを生み出すように絶えず努力しなくてはならない。自然な状態で待っていてはダメなんです。負荷をかけるというか、無理をしなくてはいけない。けれども、それが大変な無理だったら続きませんよね。作品がダメになってしまう、あるいは体を壊してしまう。

・自分がいる箱の中に安住してしまってはダメで、自分がその中にいる箱から出ていこうと、チャレンジし続けなくてはならない。むろん、チャレンジしたところで、作家がすぐにいい作品を書けるわけじゃありません。あるいは、いい製品が作れる、いい技術が見つかるわけじゃない。けれども、チャレンジしないでいると、いつまでも箱の中にいることになる。それでは、作家として、あるいは職業人として、伸びない。先行きがない。

・ドン・キホーテの物語です。ドン・キホーテは、みんなから、狂人だ、変人だ、とばかにされている。そこで、ドン・キホーテが言い返すのです。「たしかに自分は狂っているかもしれない。だけど、自分はあるべき姿を求めているんだ。あるべき姿を求めない人間もまた、狂っているのではないか」この台詞は胸に残りました。人間が生きていくというのは、どこかで、〈あるべき姿を求める〉ことではないでしょうか。それこそ最も人間らしいふるまいなんだ、とドン・キホーテは宣言するのです。

・「1、初心が魅力をつくる」ではいつも初心を忘れず、今の自分に安住せず、人から受信し吸収しようとする生き方を勧めている。私はその人が成長するかしないかは出会った人や経験から「学ぶ力」があるかどうかが大きいと考えている。「学ぶ力があ
る」とは、人から学ぼうという「謙虚さがある」ということである。謙虚さを持っている人はなにごとにも学び自らを鍛えていく。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 生き方
感想投稿日 : 2021年2月5日
読了日 : 2021年2月5日
本棚登録日 : 2021年1月28日

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