からくりからくさ (新潮文庫)

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レビュー : 522
著者 :
greenflashさん  未設定  読み終わった 

神崎からの手紙のくだりで私が感じたことを、この物語の中で唯一の第三者と言ってよい竹田が、終焉近くで言葉にしていて、好感を覚えた。

きっと一枚の織物なんだ。

それはあらゆる人と時空を覆い尽くすほどの織物だろう。

何のつながりもないはずの女性たち。彼女らは経糸。

連綿と受け継がれてゆくもの。それは旧き因習であれ民族の歴史であれ、異端のものに触れてしまえば、変わることを避けられない。それを頑なまでに拒み切れるか、折り合いをつけて変化に身を委ねつつも変わらぬ部分を遺してゆくのか。

そんな息が詰まるような瞬間を何度となく経験しながら、この世界を構成するあらゆる生命とモノたちが繰り返してきた、変わる時の苦闘、苦痛、苦悩。それが緯糸。

変化のたびに避けることができない代償を払いながらも、人も人形も、民族も遺跡もそのいのちを長らえてきたのだろう。

四人を繋いできたあらゆるものの焼失、そして一つ…いや、あるいは二つかもしれない生命の消失が、その凄絶な変化が、新しい生命の誕生に繋がってゆく。

必然…そうして宿縁。その場に居合わせた者たちの胸をよぎる、同じ思い。そのあとに訪れた穏やかな安らぎ。

織物は絵とは違い、用いた色が溶け合うことはない。それぞれがそのままに、しかし織りなされたものの醸された深みは底がない。

…なんという作品だろう。私は呑み込まれてしまった。もっと早くに読むべきだったと思う。

よき、こと、きく。りかさんとその姉妹人形に贈られた着物の紋様。この謎染は、犬神家の一族にも関わっていた。

良きこと聞く…という縁起を担いだだけではなく、未来への暗示。

与希子と紀久への祝福…か。

深い物語でした。憎しみや恨みと愛は、同じマグマから産まれる情念なんですね。

レビュー投稿日
2014年8月31日
読了日
2014年8月31日
本棚登録日
2014年8月31日
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