(P[ま]4-1)ぼくと猫と満月の夜 (ポプラ文庫ピュアフル)

著者 :
  • ポプラ社 (2012年5月8日発売)
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本棚登録 : 114
感想 : 21
4

分量的にも軽くて、筆運びもさらさらっとした感じなのに。さほど描きこまれた物語だとは感じないのに。ほとんど何も起こらないのに。

なのに…登場人物のひとりひとりが素敵で、みんな心に残る。
たった一夜の不思議が、ストーリー全体をうすい靄で覆ってしまったような、かすかなファンタジー感。

やはり綿密な構成力を松尾さんは持っているのだと感じる。

このストーリーは間違いなくファンタジー。猫が話す時点で、それは間違いない。しかし登場する人たちは、ほんの一歩すらも現実の外へは向かわない。

金色ピアスのフリッツと実際に話したカズヤでさえ、信じてもらえないに決まってるなどという、現実的そのものの冷静さで、そのことをミツルにすら話さない。仲直りをした両親と、何事もなかったように東京で暮らし始める。ひと夏の経験が彼を大人にした…とか特殊な何かが備わったとか、そんな非日常は欠片も訪れない。

誰もが普通に過ごす日常の中に一瞬紛れ込んで、すっと消えてしまう非日常。
そんな味わいが、この小説には、ある。

何よりも作者の構成力の確かさに、とても心惹かれている。もっともっと。そう感じさせてくれる作家さん。

あと一作読んで、作者への心象が変わらなければ、私はこの人の追っかけになりそうだ(笑)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年5月28日
読了日 : 2014年5月28日
本棚登録日 : 2014年5月28日

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