この本もナチス・ドイツによるホロコーストを描いた作品。3人姉妹の長女ファニーは、9歳の時、ユダヤ人というだけの理由で父親が逮捕されてしまう。その後フランス国内のいろいろな児童収容施設を転々とするが、13歳になった年にフランス国内も危ないとわかって子どもたちだけスイスに逃げることになる。ひょんなことから幼い子ども達を引き連れてスイス国境を目指す。彼女はリーダーシップを発揮し、危機を回避するため機転を利かせて、一行揃ってスイス国内へと非難していく。手に汗にぎる展開だが、ユダヤ人というだけで命が脅かされる理不尽さ、また13歳でリーダ-を背負わされる運命に、戦争の愚かさを感じた。

2018年3月9日

カテゴリ 児童書

第二次世界大戦中にヒトラーに従順を強制されたドイツの若者たちの中に、その異様さ、人権への冒涜を感じ、抵抗運動を密かに始めた者たちがいた。家族に迷惑をかけないよう細心の注意が払われたのだが、いずれゲシュタポに逮捕される時が来る。言論の自由、精神の自由をどんなに厳しい状況の中でも貫いた人がいたということに勇気を与えられる。声をあげる勇気、それは人間に与えられた良心がなせる業なんだと感じた。言論弾圧に動きかねない現在の政治状況だからこそ、若い世代に読んでほしいと思う。

2018年3月7日

読書状況 読み終わった [2018年3月7日]
カテゴリ 社会を考える

大きな一軒家から狭いアパートに引っ越すことになった家族のヤードセールの様子を描く。思い出の品、昨日まで使っていた愛着のある品が売られていく。その理不尽さを感じ、傷つく女の子。大人の理由で生活が大きく変わることは子どもにとっては切ない。しかし本当に大切なのは家族なのだと気づいていく。そこに女の子の成長を感じるのが救い

2018年3月7日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2018年3月7日]
カテゴリ 絵本

史上最年少でノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイが描く自伝。子ども時代に見ていたアニメに出てきた描いたものが実物として現れる「まほうのえんぴつ」があればいいのにと夢想してきたマララさん。
自分の国で女子教育が否定されたことに異議を唱え発信したことで、タリバン政権に与するテロリストに命を狙われたマララさん。
まほうのえんぴつは無くてもことばには力があるのだと知って、恐れず発信し続けることの大切さを訴えます。

2018年3月5日

読書状況 読み終わった [2018年3月5日]

恐竜が生きてた3億年前から棲息していた甲虫たち。色とりどりで、さまざまな姿かたちをした甲虫の生態を美しいイラストレーションで綴る。虫好き、甲虫好きにはたまらない1冊

2018年3月5日

読書状況 読み終わった [2018年3月5日]

1969年5月に東海岸から線路を敷設したユニオンパシフィック鉄道と、東海岸から敷設したセントラルパシフィック鉄道とがソルトレークシティの北で繋がった。
この絵本は東部ネブラスカ州オマハを出発してカリフォルニア州サクラメントまでの鉄道の旅を描く。
歴史の知識、地形・地理の知識、機関車の構造、鉄道工事の進み方、当時の風俗などさまざまな知識を得ることが出来る1冊であり、また読物としても面白い。
西部開拓へ注がれた人々の情熱、あくなき挑戦、先住民のことなど、当時の歴史を紐解くことで、アメリカがどのように国家の基礎を築いたかわかる。汽車好きの子には低学年からでもOKだが、じっくり読んで次への知識獲得へと繋ぐためには高学年の子に手渡したい。世界史を学ぶ中学生でも楽しめる

2018年3月5日

読書状況 読み終わった [2018年3月5日]

地中について書かれた部分と、水中について書かれた部分が、それぞれ背面で繋がって1冊の本になっている。
イラストがとても細やかで専門的な知識が子どもたちにわかりやすく吹き出しの形で書き込まれている。
ビジュアル的にも比較も出来て、わかりやすい。
子どもたちの知的好奇心をくすぐるだろう

2018年3月5日

読書状況 読み終わった [2018年3月5日]

世界中のサルについて書かれた本。260種類のサルはどのような進化を辿ったのか、進化の過程で旧世界のサル、新世界のサルと分けられるが、どんな違いがあるのか、またサルに見られる習性、鳴き声、足の速さ、しっぽの長さ、ひげの長さの比較など、サルについて様々な知識が得られる。とても情報量が多くてオタク本なみ。
絵はとてもくっきりとして特徴をつかみやすい。サルについて知る導入には使えるかな。
最後にサルが直面している危機について書かれている。そこからスタートして、環境問題について考えるきっかけになるといいなと思う。

2018年3月5日

読書状況 読み終わった [2018年3月5日]

海の漂流物は毎年800万トン、そのうちの8割がプラスティックだという。「いろのかけらのしま」とは、砕かれて漂着したプラスティックが海流で溜まって出来た島。この絵本では鳥の視点から色の溢れる島だと淡々と描く。環境破壊を声高に訴えるものではないが、逆説的に静かに現実を見せてくれる。BIB金牌受賞、ボローニャ国際児童図書展入選作。韓国の絵本

2018年3月5日

読書状況 読み終わった [2018年3月5日]
カテゴリ 社会を考える

今年の1月から毎月1冊ずつ刊行された岩波現代文庫の「石井桃子コレクション」が、5月の『エッセイ集』で完了しました。このエッセイ集は1999年に刊行された『石井桃子集7 エッセイ集』をベースに新たに27篇の新しいエッセイが加わっています。自然や暮らしのエッセイでは石井さんの豊かな感受性に触れ、子どもと本に関わるエッセイでは、ここまで子どもを理解して本を書いたり翻訳されていたのかと、改めてその偉業について思いを馳せることができました。1950年代から2002年までの50年以上に及ぶ期間に書きためられた85篇のエッセイに一貫してあるのは、「子どもに寄り添う」という思いのように感じました。

2015年7月28日

読書状況 読み終わった [2015年7月28日]

「ファーブル昆虫記」ならぬ「奥本昆虫記」です。見開き2ページにつき、ひとつの昆虫について愛情あふれるエッセイが記されています。その数、100種類。その中には今まで知らなかった昆虫も含まれており、読みながら「ほお~」「へえ~」と唸るような楽しい発見がたくさんあります。虫好きだけでなく、虫嫌いの人も読めば、虫への理解が深まること、請け合いです。

2015年7月28日

読書状況 読み終わった [2015年7月28日]

「ジネズミ」って知っていますか?数年前に我が家のご近所が建て替えになり、天井裏にネズミが居着いて困ったことがありました。同じような「ネズミ」なのだと思って読み始めると、どうも「ネズミ」と名前がつくものの、種としては「モグラ」の仲間の体長わずか3cmの「ジネズミ」なのです。随所に創意工夫を施したジネズミハウスを作り、「ちうちゃん」と名付けたジネズミを観察、育てていきます。小さなジネズミの生き生きとした様子をぜひ一緒になって味わってください。この作品は第5回子どものための感動ノンフィクション大賞を受賞しています。

2015年7月28日

読書状況 読み終わった [2015年7月28日]

2011年に公開されたドキュメンタリー映画「はだしのゲンが見たヒロシマ」を制作した石田さんは、その映画がきっかけで広島の爆心地に残る「被爆樹木」について知ります。それから3年の歳月をかけて東京から広島に通い、「被爆樹木」について調べ、それらの木にかかわる人々から被爆について証言を聞いたり、戦後すぐに被爆樹木をスケッチしていた大学生などから聞き取り調査をします。スケッチや地図など手描きの資料も多く、ヒロシマについて、「木」という視点から考えるための興味深いノンフィクション作品となっています。

2015年7月28日

読書状況 読み終わった [2015年7月28日]

2015年8月15日にヒューマントラストシネマ有楽町ほかで公開予定の映画「ふたつの名前を持つ少年」の原作本です。この本は2003年に岩波書店からハードカバーで出版されていましたが、この6月に岩波少年文庫のラインナップに入りました。若い世代により気軽に手にしてもらえると思います。8歳の少年、スルリックはポーランドに住んでいたユダヤ人でした。第二次世界大戦下で強制収容所(ゲットー)に強制移住させられますが、家族と生き別れ、ゲットーを脱出します。森や農村を転々として生き延びていく中で不思議と助け手が現われホロコーストの嵐を生き延びて行きます。戦後70年の節目となる今年の夏。「戦争と平和」は今年は特に取り上げられるテーマですが、この本もぜひ手渡してほしいと思います。

2015年7月28日

読書状況 読み終わった [2015年7月28日]

表紙カバーの裏側に「西アフリカのシエラレオネで戦争孤児だた少女が、アメリカでバレリーナになるまでの実話」と書いてありますが、2011年に公開されたドキュメンタリー映画「ファースト・ポジション」のモデルとなったミケーラ・デプリンスの自伝です。内戦の激しいアフリカ、シエラレオネで3歳で孤児になるという壮絶な体験、親切なアメリカ人夫婦の養子になってバレエを始めるものの、黒人であるということで差別を受けるという二重の苦しみを受けます。それを乗り越え、前向きに努力するミケーラの姿は、生きにくい社会で育っていくYA世代の子どもたちにとっても勇気を与えてくれるはずです。表紙絵は酒井駒子さんです。

2015年7月28日

読書状況 読み終わった [2015年7月28日]

同じ5月に出版された岩波少年文庫の『ジャングル・ブック』の翻訳者と同じ三辺さんの訳で、2013年にカーネギー賞、イタリア・アンデルセン賞、フランス文学賞、全米図書YA部門ベストフィクションなどに選ばれたサリー・ガードナーの作品です。「もしなにかがちがったら、とおれは考える。もしサッカーボールが塀の向こうへいってなかったら。」舞台は1965年。実際にあった事実をベースに、もしその歴史的事実が違っていたら・・・という設定で書かれている作品です。100の章から成り立っていますが、それぞれの章はせいぜい3ページ程度の短いもので、時系列もバラバラで、行きつ戻りつしながら、一気に話の中に引き込まれていきます。「圧倒的なパワーのある歴史改変SFだ。」、「感嘆にふるえ、息がつけないほどの完璧な物語。」と裏表紙に印刷されているキャッチコピーがそのままのYA作品です。

2015年7月28日

読書状況 読み終わった [2015年7月28日]

福音館書店古典シリーズの木島始訳(1979年)で読み継がれてきたキプリングの『ジャングル・ブック』がこの度新しい翻訳で岩波少年文庫になって出版されました。ジャングルで狼に助けられ育てられた人間の子、モウグリと、ジャングルの掟を教えるヒグマのバルーと黒豹のバギーラの物語は、今も読む者を引きつけていきます。キプリングが『ジャングル・ブック』と『続ジャングル・ブック』を著したのは1894年と1895年のこと。舞台となったインドのジャングルは大英帝国の植民地でした。そうした時代背景は今の子どもたちにはあまり意味をもたず、さまざまな解釈ができるファンタジーとして読んでもよいと翻訳者の三辺さんが訳者あとがきに書いています。ディズニーアニメとは違う、インドのジャングルを舞台にした冒険物語を ぜひ今の子どもたちにも読んでほしいと思います。

2015年7月28日

読書状況 読み終わった [2015年7月28日]
カテゴリ 児童書

『ウェン王子とトラ』などの作品があるチェン・ジャンホンの新作絵本です。ロンは親を亡くしひとりで漁をしています。ある嵐の夜、どうしても食料を得るために亡くなった父親の言いつけをやぶって漁に出ます。その時、釣竿に引っかかってきたのは、なんとガイコツでした。ガイコツを自分の家に連れて帰り、食べ物を分け与えると・・・実は、ガイコツは嵐の海で息子を亡くした漁師でした。とても力強い筆致で描く不思議な物語です。

2015年7月28日

読書状況 読み終わった [2015年7月28日]
カテゴリ 絵本

昨年、日本各地の美術館を巡回したブラティスラヴァ国際絵本原画展のノミネート作品への中学生までが投票出来る「子ども審査員賞」で各地で一位を獲得したトルコの絵本作家フェリンドル・オラルの絵本です。昨年、私も平塚市立美術館での展示を見ましたが、文章はトルコ語で書かれているのにも関わらず、絵の美しさと、流れるようなストーリー展開から、文字が読めなくても作品世界にぐっと惹き込まれるという不思議な体験をしました。その人気ぶりを受けて、ブラティスラヴァ国際絵本原画展の審査員でもある広松由希子さんが翻訳されました。ぜひ、手にとって読んでみてください。

2015年7月28日

読書状況 読み終わった [2015年7月28日]
カテゴリ 絵本

かわうそのオスカーは滑り台で遊ぶのが大好きです。もっと高いところから滑りたくなって、お父さんの止めるのも無視して山のてっぺんへ向かっていきます。ところがオスカーを狙うきつねが現われ、さらにそのきつねを狙っておおかみが現れます。オスカーはいったいどうなっちゃうのでしょう。この本も絵本から読み物へ移行していく時期の子どもたちにぴったりです。テンポよくお話が進んでいくので、初めて読み物を手にする子どもたちも自分で次々ページをめくって読み進めることが出来るでしょう。

2015年7月28日

読書状況 読み終わった [2015年7月28日]
カテゴリ 児童書

もうすぐ6歳になる女の子ベッツィ・メイの日常の何気ない出来事が9つのおはなしになって収められています。どれも子どもらしい、ちょっとしたエピソードが巻き起こるのですが、両親も乳母のナニーも温かく育っていくのを見守ってくれているということがわかります。「ベッツィ・メイ おにんぎょうとパーティーをひらく」などは、ベッツィが楽しみにしていたお隣のピーターの家でのパーティーに風邪をひいて行けなくなるのですが、ナニーが子ども部屋にあるお人形たちを座らせて、素敵なティーパーティーのセッティングをしてくれるのです。相手がお人形なら風邪をうつす心配もないですものね。この作品は1940年に発表されましたが、今回初めて邦訳が出版されました。絵を描いているのは、“ジョーン・G・トーマス”ですが、あとがきで翻訳者のこみやさんが、『テディ・ロビンソン』シリーズや『思い出のマーニー』を書いた作家ジョーン・G・ロビンソンのことだと説明しています。そうやって読むとロビンソンの『おはようスーちゃん』の女の子にもベッツィ・メイは雰囲気が似ているように思います。絵本から読み物へ移行する時期の幼年童話としておすすめです。同じ原書から分冊して『ベッツィ・メイとこいぬ』が4月末に発行されています。

2015年7月28日

読書状況 読み終わった [2015年7月28日]
カテゴリ 児童書

1946年にアメリカで出版されていたマーシャ・ブラウンのデビュー作です。5月7日の「追悼 マーシャ・ブラウン」という記事でもお知らせしたとおり、マーシャ・ブラウンは今年の4月28日に亡くなりました。絵本の最後に「この作品について」と題して、マーシャ・ブラウン自身がデビュー当時を振り返って短い文章を寄せています。その日付は「2015年1月3日」。まさに彼女の最後の仕事となったのでした。まだ、通りで子どもたちが遊ぶことが出来た時代に、移動式のメリーゴーランドが馬車でやってきます。子どもたちは大喜び。貧しい家のアンソニーも乗りたいけれど、おこずかいを持っていません。そんなアンソニーを見ていたメリーゴーランドを引いてきたコレッリさんはアンソニーにメリーゴーランドを回す仕事を手伝わせ、その代償に最後に乗せてくれたのでした。メリーゴーランドから降りてきた時のアンソニーの喜びの表情ったら!マーシャ・ブラウンの原点を見たような気がしました。

2015年7月28日

読書状況 読み終わった [2015年7月28日]
カテゴリ 絵本

001年に出版されたいたスケッチ集が、「エドワード・アーディゾーニ展」開催に合わせて増刷されました。ここに収められている絵はすべて家族や友人へ送った手紙です。アーディゾーニは自分が見聞したものを克明に描いて、それを手紙として送っていたのでした。絵に付けられた短い言葉には彼の優しさやユーモア溢れており、アーディゾーニをさらに深く理解することが出来そうです。

2015年7月28日

読書状況 読み終わった [2015年7月28日]
カテゴリ エッセー

イギリスの詩人で、子どものための詩やお話を手がけたジェイムズ・リーヴズの詩に、アーディゾーニがイラストをつけた詩集です。英語圏では1952年に出版され長く読み継がれてきていた作品です。この詩集を翻訳された間崎ルリ子さんは、若い頃にニューヨーク公共図書館で児童図書館員として働いていた時に、この詩集を読んで聞かせてもらっていたというのです。長く日本では出版されていませんでしたが、2012年にこぐま社から完訳版の『チムとゆうかんなせんちょうさん』が出版された折に来日して教文館ナルニア国で講演されたイギリス児童文学評論家のブライアン・オルダーソン氏が「二十世紀に出た一番すぐれた本」と称され、出版の運びとなったようです。翻訳の言葉も子どもたちの耳に心地よいように、丁寧に選ばれており、アーディゾーニの挿絵とともに詩のもつ味わいにも十分触れてほしいと思います。

2015年7月28日

読書状況 読み終わった [2015年7月28日]
カテゴリ 詩歌
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