三浦しおんの小説は未読だが、瑛太&松田龍平は、アヒルと鴨以来で、期待を込めて拝見。
ネタばれ注意。
いや、傑作でした。
大森立嗣の脚本も、過不足ない言葉で秀逸。
何より、松田龍平が素晴らしい。まだ27歳ですか??
龍平のもともと持っている独特の浮遊感と行天のキャラがマッチしている。世の中を俯瞰的に切り取った短いセリフの中にある、彼自身の世間(や親)に対する割り切れない思いがこぼれ出ていて、
監督の演出力と、それに応える龍平の存在感に驚いた。
親と夜逃げしてチワワを捨てられた小学生、親に愛されない状況をどうすることもできない由良、義理の母から恐喝まがいに金を無心し、ストーカー行動に出る山下。これら、どうすることもできない閉塞的状況に追い詰められた弱者にも、ウソ偽りなく厳しく正直に語りかける2人(これは多田=瑛太のキャラによるところが大きいが)。そして、実際にはおたがいに傷を抱え、なめあいながら寄り添うことを選ぶ2人の人間味あふれる存在。
個人的には、自分を刺した山下のことを気遣い、「山下君、まだ生きているかな?」という行天に、多田が詰め寄る部屋のくだりが最高でした。喪失感にさいなまれることと、愛していても所有していても、その方法がわからないことと、どちらも悲しいことだ。だからこそ、死んだら終わりだという考えと、希望を叶えて死ぬことは幸福なのだという考えと、対立しているようでどちらも正しい。
どうしようもないことの、その先にある境地。諸行無常の世の中で、安易にすがることなく到達する境地。
大げさな言い方をすれば、被災後の日本人のメンタリティーの在り方にも一石を投じる作品ではなかろうか。
- 感想投稿日 : 2012年10月29日
- 読了日 : 2012年10月29日
- 本棚登録日 : 2012年10月29日
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