転がる香港に苔は生えない (文春文庫 ほ 11-2)

著者 :
  • 文藝春秋 (2006年10月6日発売)
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本棚登録 : 696
感想 : 67
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香港返還を跨いだ滞在記。
女性特有のというのかどうかわからないけども感傷的すぎる感じはあるのでところどころ何だこの臭さは…と思いながら読んだ。ただ、ひとつの街に夢中になって先走る感情を抑えきれない感じなら経験があるのでまあまあ共感できる。
大陸人と香港人ではお互いに違う人種と考えているようだけどどっちも同じぐらい猛々しいと思う。図々しさがなければ大陸でも香港でも生きていけない。「賭博をしない男にいい男はいない」という言葉の説得力は後にも先にもこの読書でだけ自分に響くのだと思う。
さまざまな背景を持つ人間が状況の変化に対応しながら常にどう立ち振る舞えば生き延びられるかを考え、いつまでも気が休むことはない。カオスの街で誰もが終わりのないサバイバルゲームをやっている。流れに身を任せる生き方でなんとかなる街ではない。終章で著者は苔の生すまで巌となる日本は安全であり苔のつく暇もなく転がり続ける香港は安全ではないと書く。600頁を超えるいくつものエピソードはそれぞれ気ままに書かれたようでもここでタイトルと係ってすべてきっちり収まってしまうあたりなかなか秀逸。それにして現地で就労するわけでもなくこんなにたくさんの人としっかり繋がってしまえる著者はすごい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 中国全般
感想投稿日 : 2010年1月28日
読了日 : 2008年12月23日
本棚登録日 : 2008年12月23日

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