当時は4部作予定だったのがいつの間にか2部作(Duology)となっていたChronicles of Aliceシリーズの新作です。
前作「Red Queen」があまりにも投げやりな書きっぷりだったため、シリーズはそのままフェードアウトして終わったものだと思っていましたが、数年ぶりに新作がリリースされました。
純粋な続編というよりはどちらかというとシリーズファン向けの外伝的作品になっており、旧作「Alice」と「Red Queen」を読んだ読者を前提としています。

本作はNovella(短編)形式となっており、この時点で前作の二の舞になりそうなのは覚悟していました。
しかし蓋を開けてみれば、汚名返上したといっても良いほどの作品になっています。

4つの短編で構成されています。

「Lovely Creature」
新キャラであるエリザベスの視点で年月の空いた1作目「Alice」を振り返るようなプロットとなっています。しかしアリスと深い関わりを持つエリザベスのキャラには単なる狂言回しに終わらない魅力があり、物語全体のテンポも良くて評価は高いです。
1作目のような裏社会的な描写はマイルドになっているものの、退廃的な世界観は1作目を思い起こさせてくれました。

「Girl In Amber」
2作目「Red Queen」を彷彿とさせるプロットで、実際に2作目を振り返る描写もあります。
ハッチャーが放置気味なのも一緒です笑。
色々なところで2作目のグダグダを思い出してしまったため、この話はまあまあ。

「When I First Came to Town」
ハッチャーメインの過去回です。こちらは逆にアリスがほぼ不在です。
ハッチャーの過去は1作目から語られていましたが、この話はハッチャーがまだニコラスだった頃のストリートファイト時代を舞台としています。
1作目で語られていたキャラクターも登場します。
この話を深堀りしなくてもメインに関わる過去は既に旧作で完結しているので、完全にハッチャーファン向けな読み物になっています。
本シリーズとしては非常にストレートな展開で、どこか毛色の違うエピソードですが、オールドシティの闇要素が復活しており、既出キャラの1作目に繋がる伏線が張られていたりと、なかなか楽しめる内容でした。

「The Mercy Seat」
最後の最後でアリス&ハッチャーのエピソードです。現在の居住地を離れ、アリスの夢見た理想の場所に移住するため二人は山を越える旅に出ます。
全体的に尺が短く急ぎ足で、魔女狩りの村もありきたりな展開でさっぱりと終わってしまい、エピソードとしての評価はまあまあ。しかしアリスとハッチャーに大きな進展があり、最後は救いのある展開であったため個人的には満足です。


総合的に1作目が一番良い、という事実に変わりないものの、前作の失敗を見事に挽回してくれたことでシリーズとしては1作目「Alice」に次いで評価したい作品です。
アリス&ハッチャーを見たかったファンにとっては今作でもどちらかが放置されっぱなしなので煩わしさを感じますが、最後のエピソードで上手くまとめてくれたので満足しました。
2作目の失望からフェードアウトせずに綺麗に完結したのは喜ばしいことです。

もし今後シリーズを続ける展開があるならば、本作で新登場したエリザベスにフォーカスされたスピンオフ的作品になるのかもしれません。

2021年3月8日

読書状況 読み終わった [2021年3月8日]
カテゴリ YA

MIDI検定の教科書としての評価であれば、この一冊があれば十分です。
ただこれはMIDI検定自体の問題ですが、当書籍を教材としているせいか、MIDIプロトコルやMIDI音源とは全く関係のないシンセサイズやオーディオ知識、ミュージックプロダクションも出題範囲としているところは些か疑問なところがあります。

一つのミュージッククリエイターの参考書として見ると、やはり広く浅くといった内容です。
そのうえDTMといった用語が解説も無しに出てくるなど内容不十分なところもあります。

そもそも昨今では、MIDI音源はもはや衰退の一途をたどっており、MIDI規格以外にもMIDIを使用したMPE、UDPなどで疎通するOSCなど覚えるプロトコルは多くなっており、プロダクション面でもストリーミング配信の発展やプロモーションの変化など業界標準が変わりつつあるため、これらの知識を知っていればなんとかなる、ということは無いでしょう。

個人的には新規格となるMIDI 2.0をどのように取り扱っていくかが気になります。

2021年3月6日

読書状況 読み終わった [2021年3月6日]

アーバンファンタジー、スチームパンク、クエストサーガ、パラノーマル、あらゆるおいしい要素を混ぜ込んできたシリーズを1冊にまとめた作品です。
私はメインキャラの一人でワイルド成分高めなAarethというキャラが好きで最後まで読んでしまいました。

コンプリート版が出るまでは一時期ストアから消えたと思ったら、突然本のタイトルが変わったりとフラフラしていましたが、シリーズの根本となるVampire Projectを主題として改題し、コンプリート版が出たことで統一されています。

ありがちな展開、章末の匂わせ技法の多さ、誤字脱字に加えてどうみてもキャラ配置ミスがあったりとマイナスな部分が目立ちますが、勢いで読み進んでいけるほどの魅力は会ったと思います。
最終的にキャラを出しすぎて伏線回収不足で尻切れトンボに終わったところは海外ドラマの打ち切りのような寂しさも感じますが、楽しく読めたシリーズでした。

ちなみに1冊目に当たる部分はロマンス要素がほとんどなく、純粋な冒険ものとして描かれています。

2021年3月5日

読書状況 読み終わった [2021年3月5日]
カテゴリ Fantasy

一般の人々が立ち入ることは現実的に難しい、世界100箇所のスポットを紹介した本です。

この作品は「絶対に行けない世界の非公開区域99」というタイトルで和訳されています。
本タイトルの100箇所から99箇所に減っているのは、97箇所目「Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant(福島第一原発)」が削除されているためです。
東日本大震災を考慮しての対応でしょう。

2021年3月4日

読書状況 読み終わった [2021年3月4日]

「Python 3 エンジニア認定データ分析試験」の教材として購入しました。

Pythonの開発経験者でデータ分析を知りたい場合、この本はデータ分析の手法というよりほとんどモジュールの使い方しか書かれていないため、物足りなさを感じるかもしれません。数学解説の章はおさらいには良いかもしれませんが、やはりこれだけでは物足りないでしょう。
逆に一から全てを学ばなければならない方にとっては、Pythonの導入部分・文法などは急ぎ足で綴られているため、これだけでは知識が足りません。
いずれにせよ、中途半端な内容です。

私はベータ試験時に受験したので現在の試験内容は変化していると思いますが、完全初学者の立場から見た場合、この教材だけで試験を合格するのは難しいと感じます。
前述の通りPythonの導入部分が急ぎ足で大半がモジュールの使い方しか書かれていないにも関わらず、あまり詳しく書かれていないデータ分析そのものの出題が多いので、この本だけでカバーしきれないかもしれません。

エンジニア認定基礎試験の教材はオライリー社出版、更にいうとPython公式チュートリアルの内容そのものだったので比較的公平な試験でしたが、エンジニア認定データ分析試験は翔泳社による同シリーズ中この一冊のみが教材に選定されており、試験の質も低下してしまっているように思いました。

2021年3月3日

読書状況 読み終わった [2021年3月3日]

Kindle Singleで初めて読んだ筆者自身のエッセイです。

Linda Grantは2013年末、4階建てのメゾンから2ベットルームの狭い部屋に引っ越しますが、その際に溜めていた何千冊もの本を処分することになります。
自身の図書館を破壊するまでの決意に至るまでの苦悩と葛藤、そしてKindleの魅力や疑問などを描いた一作です。

ここで語られる思い出の作品は私には全く馴染みがありませんでしたが、自身のコレクションと影を重ねることで共感できる部分も多いと思います。

ただ結局本質はそこで、人生のイベントで自分の手にしたものを手放さなければならない場面は少なからず発生するわけで、趣味人間が引っ越しや結婚などを機会に断捨離をするというのは、なんら珍しいことではありません。それは悲しくて当たり前のことです。
この事実に気がついた作者はモノを大切にしない大半よりもむしろ幸福であるに違いないと思います。

2021年3月3日

読書状況 読み終わった [2021年3月3日]

電車の遅延に影響されたそれぞれの人生を描くヒューマンドラマのようなものです。

人身事故で停止した終電を中心に捉えた群像劇のようなものだと思ってたのですがどうやら話によっては時間軸が異なるようで、バラバラなのですね。
終電でないのもあるし、そもそも終電うんぬん以前に、電車が関わる必要も無いのではと思うものも。

唯一最後「ホームドア」が過去→未来を明確に表現していい感じだったので、それぞれのエピソードを最後の話で集約させるという流れでもあったら、傑作だったかもしれません。

2021年3月3日

読書状況 読み終わった [2021年3月3日]

タイトルを見るとあたかもeスポーツを始めたい方への導入本のような趣がありますが、実際はむしろイベントを開催するビジネスパーソン側の、あくまでもマネタイズとしての意見にしかなっていません。
「教科書」という割にこの本に出てくるゲーム作品には一切の解説が無く、プロになるには何を準備すればいいのか、どのように参加していけば良いのか、この本では何一つ書かれていません。
もちろんeスポーツで活動するためにビジネスの知識も大切ですが、それ以前に身につけるべき知識があるはずで、この本にはそれが書かれていないため、導入本としては参考にならないと思われます。

2021年3月1日

読書状況 読み終わった [2021年3月1日]

原作ゲームはスーパーファミコンで発売され、本作品はリメイクされたプレイステーション版に併せて発行されたものです。
ゲーム版のプロットとほとんど同じですが、主人公は原作「弟切草」を手掛けた人物という設定が付加されているなど、内容はオリジナルのものになっています。

リメイク版の弟切草には「ザッピングシステム」というものが追加されましたが、これはとある場面で主人公とヒロインいずれかの視点を切り替えて物語を進めるというシステムになっています。
当作品は、そのザッピングシステムを意識してか、区切りごとに同じ場面で2人の視点がコロコロと入れ替わるような内容になっています。
しかしこのザッピングの再現が、物語が進んでいるのか進んでいないのかイマイチ掴めず、テンポを悪くしている要因になってしまっているように感じます。どうせなら区切りごとにどちらかの視点かが書いてあるともう少し読みやすかったかもしれません。

「ゲームとは違うオリジナルであり、しかしゲームそのものであり、知らない人が読んでも面白く、知った人が読むと更に面白い」そのコンセプトには非常に強い意志が感じられましたが、筆者としても消化不足だったのではないかと感じます。

原作の、ビジュアル化されたお化け屋敷のようなB級ホラー感は削ぎ落とされてしまい、小説では心理的な恐怖を入れようとした節もあるものの、うまくいかなかったように見えます。

2021年3月1日

読書状況 読み終わった [2021年3月1日]

盲目の主人公は母親とともに空家に引っ越してきましたが、この家は20年前に患者を医療ミスで死なせ、父親と兄弟を殺した看護師が住んでいた家であることを知ります。主人公はそんな訳ありの家で様々な怪奇現象に出くわし、また母親の不審な行動も気になりだして、その謎を解明するという内容です。
チャプターごとに盲目の主人公、そして20年前の看護師で交互に語られるこのホラー小説は、終盤になってとある事実が判明することで物語の視点が一転することになります。それまでのサイコ的な内容と、一転した後の悲壮感あふれる結末が印象的な作品でした。

2021年3月1日

読書状況 読み終わった [2021年3月1日]

私は歴史ものはあまり読まないのですが、この作品は出版から1ヶ月足らずでKindle Unlimitedに常駐していたので、興味本位で読みました。

第二次世界大戦でヨーロッパに派遣され、前線で戦う米軍のために車両を運転してドーナツとコーヒーなどを提供するアメリカ赤十字クラブモービル(American Red Cross Clubmobile Service)をテーマにしたヒストリカルです。

ボストン=ビーンタウン出身の女性Fiona、Dottie、Vivianaは3人とも魅力的で、戦場という殺伐とした舞台を、史実に基づきながらもユーモアに、かつ力強く描写しています。

食料提供の枠を超えて男性に奉仕する立場には旧時代の女性像をイメージしがちですが、彼女たちが兵士たちと踊り、歌い、会話し、元気づける場面は、現代的でロマンチックに表現されています。

私は何も意識していませんでしたが、Jesusが暴言のように使用されていたことについては不快であるとともに、そもそも時代錯誤であるという批判はあるようです(特にキリスト宗派の読者)。
ただ、それを加味しても本作品の完成度は充分に高いと感じます。

2021年3月1日

読書状況 読み終わった [2021年3月1日]
カテゴリ Historical

世界の恐ろしい場所を舞台にしたホラー・スリラー系フィクションで、シリーズ最初の舞台に選ばれたのはSuicide Forest、日本の青木ヶ原樹海です。

(単純に樹海を自殺の名所というステレオタイプなイメージで考えるのは適切ではありませんが、ここではそのように表現させていただきます。)

樹海のイメージを捉えた場合、全体的に殺伐とした重苦しい雰囲気、あるいは「静」に対比する恐怖のようなものを感じさせますが、この小説はそうしたイメージよりもむしろサイコスリラーばりの動的な恐怖描写が目立ちます。前半は緩やかに、それなりの静かな怖さもあってか導入としては良かったのですが、中後半以降はまるでパニック系のB級ホラーのような展開で完全にイメージしていた恐怖とは異なるベクトルに進んでしまっており、なんだか残念でした。

この作品で印象に残っているのはむしろ序盤で少しだけ語られる妙にリアルな日本社会の描写でしょうか。どこか退廃的でメタ的で、疲労しているそれは筆者の取材の賜物か、それとも一時期滞在していたのか?と考えずにはいられませんでした。

2021年3月1日

読書状況 読み終わった [2021年3月1日]

Kindle Unlimitedにて。

キッズ向けに25の短く怖い話が収録されています。
その怖い話は定番の幽霊や怪奇現象と言ったものだけでなく、現代のネットミームのようなものだったり、事件じみた生々しい話だったりと様々です。

個人的に「エレベーターで一緒に上にのぼっていた人が途中で降りて、ナイフをちらつかせつつ階段を上がっていく~」話がグローバル規模の話だったのには驚かされました。

2021年3月1日

読書状況 読み終わった [2021年3月1日]

Chronicles of Aliceシリーズの2作目、「Alice」の続編です。

前作で既に物語が完結していたため正直あまり期待できるものではなかったのですが、やはり予想は当たっていたという感じです。
本作のハッチャーは狼にされて以降ほとんど出番が無く、ほぼアリスの1人旅のようになってしまっているところ。前作の社会的な闇要素が減り、単なるダークファンタジーのようになっているところ。本題のRed Queenがほとんど意味を体していないところ。

しかしこの本にはその内容以上に致命的な問題点があります。
それはチャプターが「ない」ことです。第一部・二部というおおまかな区切りはあるものの、それ以外はチャプター区切りがまったくなく、キリのいいところで中断することができません。
ですのでこの本を読む場合、時間を取って一気に読むか、何ページ程度とどこかで区切りをつけないとダレる可能性は非常に高いです。

全体的に陰湿だった前作と違って原作に立ち返り、かつAliceの世界観を残しつつ展開していており、ある意味ではYAに洗練された感じがありますが、前作のコンセプトとはちょっと合わないかもしれないという感じでした。

4作中の2作目で、前作の発行が2015年、本作が2016年。
それ以降音沙汰がなかったことで、事実上このシリーズは終焉したと思われていましたが…

2021年3月1日

読書状況 読み終わった [2021年3月1日]

タイトル通り「不思議の国のアリス」シリーズの別解釈ものの一つです。
不思議の国のアリス・鏡の国のアリスのストーリーやキャラクターの素材を使用しているものの、原作よりもダークな世界観でほとんど別物と言って良いでしょう。

アリスは記憶を失った状態で廃れた世界オールドシティの精神病院に幽閉されており、同じく記憶を失い投獄されていた殺人鬼ハッチャーとともにとある出来事から脱獄します。しかしアリスたちにとって危険な存在であるジャバウォックも解放されてしまい、彼を倒すため、またアリスが微かに覚えていたThe Rabbitの正体を知るためににチェシャ・キャタピラ・セイウチなどのオールドシティのボスに出会い、彼女の記憶を蘇らせていきます。

残酷な描写、暴力表現も多く、また奴隷・売春・レイプといった反社会的表現もあるため、YAとしては若干重苦しい感じがします。

闇の真相が明かされ、復讐劇の結末を見届けたくほど後半の展開はそこそこ面白かったです。ただ急ぎ足な部分もあってあっさり決着がついてしまったかな、という印象もあります。思ったよりかはハッピーな終わり方でした。

Chronicles of Aliceは4部構成予定らしいですが、この時点でほぼ物語として完結しているため、今後の展開を伸ばす必要があるのか疑問には思いました。
事実、2冊目は…。

2021年3月1日

読書状況 読み終わった [2021年3月1日]

美女と野獣をベースに、ゲームオブスローンズ、指輪物語、パラノーマル的な要素を詰めたファンタジー作品です。異種族の世界で暮らすことを余儀なくされる展開はダレンシャンのようなものも感じました。
パラノーマル的少女漫画なノリで、当時はいかにも現地で人気が出そうだなと思っていましたが、先月新刊がでるほどシリーズ化し、映画も製作中だそうです。

対象年齢はYAのはずなのにいつの間にかアダルト対象になっていたりと不思議な作品です(実際にKindleでは年齢確認を求められるなど)。
YAでなくNAとして区切る方もいらっしゃるようです。

私は2作目を購入しましたが、未だ見ていません。

2021年3月1日

読書状況 読み終わった [2021年3月1日]
カテゴリ YA

そもそも交通手段が発達している首都圏の中でも秀でた交通ネットワークを持つ23区内において、首都高ほどハイリスクな移動手段はありません。
どんな交通手段よりも早くたどり着く事もできる一方で、徒歩のほうがましだったというくらい渋滞するケースもあるでしょう。

本作はそんな贅沢な首都高を利用するドライバー達の人間ドラマ集です。
首都高がメールマガジンで展開していた短編集だそうです。

首都高をテーマにしたとはいえ、メインは首都高ではなく首都高を利用する人々。スポーツカーが首都高を速度超過でかっとばす、そんなアウトローな話はありません(首都高公認なのでそれは出来なかったのだと思いますが)。

むしろ首都高なんて使わなくてもいい、という場面でわざわざ首都高に乗ってしまう、不思議な話が多いです。
慣れない東京で電車移動とさほど変わらない所要時間の場所へ、レンタカーを借りて首都高で移動する人。千鳥ヶ淵の桜を見せるため、首都高に乗る人。

この世界の人々は、とりあえずの前提条件が車移動限定であり、絶対に首都高を使わなければならない呪いにかけられているようです。
霞が関から都心環状線外回りでは上野線方面には行けない、通常であれば「一般道で行こう」と考えますが、この作品では「内回りでいこう」となります。

情感あふれる人間ドラマ風味に突然謎の首都高ムーブ、というシュールな情景を想像できる点で、ある意味都内を頻繁に運転するドライバーの方々におすすめしたい作品です。

最近の首都高は延伸したり、地下化工事が始まったり、出入口廃止したりと、ここ数年でだいぶ変化していますので、また新しい首都高を舞台にした人間ドラマが作られると面白そうですね。

ちなみに、私はおそらく一瞬しか見られないだろう千鳥ヶ淵の桜より、外回り芝公園付近で横目に流れる東京タワーの方が好きです。

2021年3月1日

読書状況 読み終わった [2021年3月1日]
カテゴリ Short

「埼玉化する日本」というより「さいたま(市)化する日本」、もっと広くいえば「郊外化する日本」と表現するのが正しいでしょう。
良くも悪くも、ここに書かれた多くの事象は郊外モデルに当てはまります。
もし筆者がさいたま市でなく千葉市にいたら「千葉化する日本」になっていただろうし、横浜市にいたら「神奈川化する日本」になっていたと思われます。

ただ、東京23区内で生まれ育ち、点在したエリア間で選択的なショッピングカルチャーを経験してきた筆者の視点には独特なものがあります。私の近所にある某イオンモールで、TDLかのごとく衝撃を受けて市内に移住してしまった人は初めて見ました。
おそらくどの国にも主要エリアを離れればこのような大きなショッピングモールはあると思うのですが、そのような場所にすら通うことがなかったのではないかと思うくらい尖った感性で綴られており、それが逆に新鮮に写りました。

どこか鼻持ちならない、小馬鹿にされたようにも感じますが、この作品に関してはそれらは皮肉というより、本当に何も知らなかった人が純粋に真面目に書いたという感じがあります。
筆者のような境遇がなければ書けなかったという点で、ある意味での珍しさはあるかもしれません。

2021年3月1日

読書状況 読み終わった [2021年3月1日]

「ホタルノヒカリ」と「ブスの瞳に恋してる」を足して2で割ったような環境下で、外見で大きなハンデを負った女性のキャリアと恋愛を綴ったシリーズの第一巻です。

ブスであることに幾度か辛い経験をしているようなものの、主人公自身は自分を卑下しているところ以外さほどひん曲がった性格ではなく、むしろしっかりもので、彼女の同僚や利用客も外見を拒絶している描写は少ないように感じます。

仕事に支障が出るほどのブスではないところはいまいちパンチが弱いかもしれませんが、そこにB専の上司が噛み付くことで面白くなっていると思います。

また、彼女の家族、知人、同僚や利用客なども個性的で、魅力ある部分の一つです。
1話完結の短い話で分かれており、サクッと読めます。

映画は同年に公開された「翔んで埼玉」の影響に埋もれてしまいましたが、私はこちらの方が好きです。
ロケは新都心でしたので、こちらも翔んで埼玉に負けじとさいたまアピールしていたらもう少し評価は変わっていたかもしれませんね。

2021年2月28日

読書状況 読み終わった [2021年2月28日]

「Ready Player One」の続編です。
前作は映画化もしていますが、小説版を読まないとついていけない部分は多いでしょう。

成功した前作の力を借りようとして失敗する作品は多いですが、この本もその一つと言えます。

全体的に前作を真似たプロットにはワクワク感がなくなり、モノローグのせいもあってか冗長化しています。
むしろ社会的・政治的風刺が強くなった傾向で、うんざりする描写もありました。多くは語りませんが、いわゆる「ポリコレ」要素も鼻につくようになっています。

前作は冴えない主人公が電子世界でいろいろなオタクたちと出会い冒険し、大人も顔負けなサブカルチャーネタを引っ張り出し、外部勢力と戦いながらも世界の創造者の知恵比べに勝利した、何も考えず最後まで楽しめる作品でした。

今作は成功者となった主人公がその世界で富と権力を手に入れ、まるで支配者のような存在になりつつあります。
創造主から引き継いだ世界のシステムについて、そして五感に届く新しいインターフェースについて、その権利を乱用することが容易な立場にあります。
それは独裁的で、ある場面では思考が悪者そのものです。
前作で多くを経験した彼の姿はほぼ無きに等しいです。
主人公以外の旧メンバーも、ほとんど魅力が半減していますが、自身の正義思想を盾にまごうことなきヒールターンした主人公の劣化はとくに酷いです。

新キャラもほとんどが最後まで関わらず、尻すぼみになってしまっている感は否めません。
それでこそジェンダー問題を意識した魅力的なキャラもいましたが、全体のストーリーに密接に関わることはなく役割が終わればすぐ捨てられ、とりあえず出せばウケるでしょ、という感じの都合のいいキャラクターにしかなっていません。

最大の魅力とも言えた80〜00年代のサブカルチャーネタは、今作においてその魅力は薄まったように思います。
前作のように、何か一つネタが出てきたら、Wikipediaを延々と引用するかのように止まらなくなるオタク的トークは今作でも健在です。ただ、その出方はあまりにも突発的で、盛り上がりに欠けます。
前作はこのパロディネタが奇跡的に連鎖していて面白かったのですが、本作はぽっと出てはすぐに消えるような消化不足感が否めない傾向にあります。
それらのネタを知らずともプロットの勢いだけで楽しかった前作とは違って本作は全体的に悪い部分だけが目立ってしまい、ひたすら古くて寒いネタが連発してしまっているのです。

OneのようにTwoにもいくらか面白い箇所があったので、前作のファンであれば読む価値はあると思います。
しかし、全体を通してみれば、続編としては失敗に終わってしまった感じがあります。

2021年2月28日

読書状況 読み終わった [2021年2月28日]

ゴシック系キッズブランドでありアニメも放映されていた「Ruby Gloom」のノベルです。
ルビーファミリーの住む家、深夜に何者かによってマフィンが食べられてしまうのを調査するという内容で、スカルの探偵が中心となっています。
キャラクターのアクションはアニメ版に忠実で、イラストも多めなのでアニメ版が好きな方なら楽しめると思います。

2014年11月7日

読書状況 読み終わった [2014年11月7日]
カテゴリ Child

ノンフィクションの登山記です。
タイトルは「Blind Descent」ですが実際そのような危機的状況に陥る下山シーンは終盤だけで、メインはエベレスト登山までの経緯と、頂上に至るまでの出来事を描いたものになっています。
なので、タイトルもサブタイトルも詐称感が否めません。
この作品は無料セール中に読んだのですが、有料で読んだ場合はもう少し評価が変わっていたかもしれません。ただ内容はそこそこ面白く、表現もストレートで読みやすい作品でした。
海軍出身の筆者は2人の子と妻を愛しているナイスガイです。

2014年10月6日

読書状況 読み終わった [2014年10月6日]
カテゴリ Non-fiction

話題になってて本だけでも読んどこうと思いこちらの本を購入したのですが、面白かったので結局映画も見てしまいました。
劇中にあった歌シーンはそれなりに省略されていますが、それ以外は映画とほぼ同等の内容で、短く読みやすいです。
映画のシーンを選り抜いたカラーページもあります。

2014年8月29日

読書状況 読み終わった [2014年8月29日]
カテゴリ Child

ヴェロニカマーズのノベライズです。ドラマ→映画→小説で繋がっているため、ドラマと映画をひと通り見てから楽しむファン向け作品といえます。
ノベル版は常にヴェロニカに視点が向けられ、別々に起きた2つの誘拐事件を調査する探偵パートがメインになっています。ローガンとはチャット程度で平行する恋愛要素は皆無です。
ロブ・トーマスが執筆しているのでキャラにブレがなく楽しめました。マーズ家にとって過去に深い繋がりがあったあのキャラも再登場します。

2014年8月6日

読書状況 読み終わった [2014年8月6日]
カテゴリ Mystery
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