映画が良かったのでオリジナルも読んでみようと思いました。
結果、映画よりも面白かった、正確に言うなら映画とは全く趣の異なる面白さがあった。
鹿野さんの生きざまを描いた(切り取った)のが映画だとしたら、鹿野さんを含んだ周囲の生きざまを描いたのが本著であろう。
鹿野さん(と周りのボランティアさん)を通じて、人間がより良く生きるためには制度や法律、インフラ…といったマクロ的で外部的な問題から、自己の存在を見つめようとする、マズローの自己実現理論を想起させるような哲学的で内部的な問題まで、全方位的に「生きる意味」提起している。
この本がすばらしいのは、鹿野さんだけでなく様々な人生を背負ったボランティアさんのひととなりまで描いていることである。山田太一さんがいうように「読む人の心に届く」ことである。
奇しくも、本編にて鹿野さんのことをボランティアは「尊師」といってからかい半分に呼称している時期があるが(笑)、ボラさんたちが鹿野さんの介助ボランティア活動にハマっていくさまは、かの「オウム信者」と似た構造かもしれない(失礼・笑)
ただ、障害者介助関係者だけでなく、生きる意味や人間関係、他者との関係などに悩んでる人は読んでみてもいいかもしれない。
最後のほうに出てくる、斉藤大介さんの(453ページ以降)達観的な?一連のくだりは私の中で着地点として答えは出でいるような気がする。
障害者だろうと健常者だろうと「生きる」のは大変で苦悩だらけだけど、それ以上でもそれ以下でもない、そんな域まで行きたいとおもう。
- 感想投稿日 : 2019年3月9日
- 読了日 : 2019年3月8日
- 本棚登録日 : 2019年3月8日
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