
小生にとってとってもとっても思い入れのある一冊。
それは小生がまだ年端もいかぬ純粋に読書を楽しんでいた頃。
『良書に親しめ』というある方のスローガンに則り、母が、国語の便覧に載っていた文豪たちの作品をかたっぱしから集めてくれたのです。
ねだると文豪の本だけは二つ返事で買ってくれたものでした。
ASDの人は、想像力がないと言われがちですし、共感能力がないから物語文はダメダメと思われていますが、小生は毛色が違うようで、一文一文が情景をありありとイメージして読むことに、登場人物のセリフにウキウキすることに、それはそれは楽しくて仕方がなかったのでありました。
この「銀河鉄道の夜」との出会いは、深夜に観たあのアニメーションが始まりでした。その結末を知っていてもやはり読ませる文章ですから、読む手が止まりません。
夜にベッドの上でこの本を開いてちびちびと味わうように読んでいました。
読み終えたらもったいないと楽しみにとっておきたくて、夜を待って少しずつ味わって読んだものでした。
自己犠牲と二人の少年の友情。
優しさ、幸せとはなんだろう。二人の少年が行き着く答えは、一体なんでしょう。
この文章の裏には、キリスト教やタイタニック号の話が織り込まれていてハッとしました。
宮沢賢治のその文体を分析した方がいらっしゃいましたが、その方の論考も読み合わせるとなるほどと頷けるはず。
アンソロジーとしても優れていて、教科書に採用された「オツベルと象」から朗読に使われていた「セロ弾きのゴーシュ」まで粒よりです。
小生は、この中でも「猫の事務所」が好きでした。
今や学校でも職場でも”いじめ”が流行っていますが、最後の結末部に賢治の意思が出ています。
賢治らしいなと小生は思いました。
- レビュー投稿日
- 2017年10月25日
- 読了日
- -
- 本棚登録日
- 2017年10月26日