私の個人主義 (講談社学術文庫)

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レビュー : 141
著者 :
hacchan320さん  未設定  読み終わった 

父親に就職と同時に渡されて手に取る。
人から勧められた本を読んだのはいつぶりだろうか。

漱石の講演6本のまとめ。
100年以上の年月を経ても色あせず、
この十数年で大学の学者が唱えていることをすでに当時から予見し独自の観点から意見しており、
世の中や世間を観察し自らの知見に落とし込む能力の高さに驚嘆する。
現代の人々、とりわけ変化の激しいこの十数年を生きる人々にも共感され、なお色あせない点からも一読の価値はあると思う。

講演の中で用いられる語彙の豊富さからも聡明な印象を受けることは必至であると思う。


内容は、現代を生きる人々に対して、「職業」、「個人」、「他者」、「国家」との関係性を明瞭にすることで生きる上でのエッセンスを与えるもの。

その内容は社会科学者のそれそのものだと思うが、
現代のように統計データが得られることがなく、
社会を洞察し、文学作品を創作することで到達したアプローチは、やはり社会科学者というよりは
文学者、哲学者、アーティストの様相を強く感じられる。


特に影響を及ぼした内容は以下。


1.他者と自分との関係性を捉えずして、対価の高い見返りを得ることはできない。

極めて当たり前のことであるが、
職業においてのみならず、人間関係の構築や道楽に関しても他者と独立したものは結果として自分の満足する対価を得られないだろう。

社会や他者との関係性に注意を払い高い対価を得るのか、
はたまた自己満足を正当化するのか、
どちらが自分にとって幸せなのかを改めて考えさせられることになった。

大学の卒業式の講話や研修、
そして自分が大学院の途中からマインドセットとして特に意識し始めたことをさらに口をすっぱく言われた気分である。

「自分の知識を社会とは無関係のただの自己満足で終わらせることは極めてアンフェアである(卒業式の総長より)」

「一般論は真面目な正論を振りかざすだけで成立する(後輩より)」

「ある程度の修養を積んだ人でなければ、個性を発展する価値もなし(本文より)」


近年はマーケット(ニーズ)よりの考えだったり、
デザイン志向(シーズ)よりの考えが社会に一般常識のように浸透しているが、
どう重心を置くかは目的や組織、立場等で決定されると思う。

が、誤解してはならないのがどちらも社会との関係性を切り離してはいない点。

このようなニーズ・シーズの関係性は個人にもほぼ同じように適用できるため、
時間に制約が生じ始め、他者との関係性が自分の利益や幸福度に直結する立場の社会人が、
自分がどう評価されるのか(結婚相手や恋人、職場での評価)、
自分の職業としてどのような専門性を身につけるべきか、
その方法はどういう考えに基づくべきかを改めて整理することができる本です。


やば、また一般論しか言えなかった。。。

レビュー投稿日
2015年5月4日
読了日
2015年5月4日
本棚登録日
2015年3月21日
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