前から私の周囲の人たちの中でよくおススメされた本。地味だし、なんかテーマが重そうなので読んでなかったけど、思い立って読んでみたら、、、地味どころではない、読み応えのある作品だった。自然の猛威の中でなすすべのない(いや、色々試みるんだけど太刀打ち出来ない)、極限状況の人間の、無力さ、浅はかさ、そして哀しみ。人間を軽々しく扱ってしまう「組織」の愚かさ、醜悪さ。日本の歴史の中で確かにあった事実を、ことさらに大げさにせず、淡々と書いていくことで一層重く深く読ませる文章の力。そういったものが幾重にも重なって、読む楽しみを増す。
この中で一番印象的だったのが、さわ女が第三十一聯隊を案内するシーン。ふわふわと雪の中を歩く姿の描写が美しく、重い内容の中で、ここだけ光が灯ったように感じる。兵士にとっても守り神に見えたのではないか。最後まで、多くの兵士の無念の思いばかりが胸に迫る中、さわ女の存在があることで少し救われた気持ちになった。

2019年7月17日

読書状況 読み終わった [2019年7月17日]
カテゴリ 読書記録

図書館司書は専門職である、ということを示す仕事のあり方もさることながら、それ以上に、その道のプロを育てる仕組みに驚いた。研修の充実ぶり、職場での日々のサポート、そして、専門職であるという本人の自覚を促すような数々のプロジェクトへの参画。図書館をとりまく世界全体が日本と全く違うな、と思った次第。少なくとも私の周りにはこんなスキルをもった人はいないし、スキルを期待されてもいない。おそらくはこれ、悪循環なので、どこかで断ち切って、研究に資する図書館の姿を少しでも示さないといけないんではないか。世間では、交流の場としての図書館が注目されてて、それは私も良いと思うし、そういうのが大好きだけど、究極は資料であり新しい情報も含めて提供することがもっとも大きな図書館の役割だと改めて思う。人々の知識や文化を深める基盤をいかに整備できるか。これから情報は、知識はどういう形で後世に継承されるべきなのか。という大きなビジョンをもって日々の仕事に取り組む必要があるのだ。と襟を正したくなる一冊。

2019年7月12日

読書状況 読み終わった [2019年7月12日]
カテゴリ 読書記録

ベニシアさんの生活スタイルが好きで、手に取った本。
自然に対する姿勢や人生への向き合い方など、すごく私の理想とする形で、いちいち納得できるんだけど、いざ実践となると、なかなか出来なくて。
あの好奇心と意志の強さ、勤勉さを少しでも見習いたい。

2019年7月5日

読書状況 読み終わった [2019年7月5日]
カテゴリ 読書記録

すごい実践家。読書や子供たちに対する熱い思いが怒涛のように伝わってきて、こちらまで元気になるよう。
同じ図書館に勤めるものとしては、合間合間に挿入される、実践の記録がありがたい。なるほど、こんな風にブックトークしてるんだな、とかこんなオリエンテーションしてるんだ、とか様子がよくわかるし、 自分でもこんな風にやればなんとかできそう、とか、これは自分では出来ないから、もう少し勉強しよう、とか自分の仕事に引きつけて考え易く、とても良いモデルになる。
また、今ではビブリオバトルの第一人者とも言える木下さんと、ビブリオバトルとの出会いも印象的。自らやりたいと思ったことではなかったのが意外だったけど、与えられた機会を生かして熱心に取り組み、やがて周囲を巻き込んで大きな流れを作っていくのが素晴らしいと感じた。
あの周囲を巻き込む力はどこから出てくるんだろう…。
羨ましくて仕方ない。

2019年7月1日

読書状況 読み終わった [2019年7月1日]
カテゴリ 読書記録

南方熊楠は、その業績からすごい人だなぁと尊敬してたけど、この本を読んで、とても好きになった。
南方熊楠と言えば「粘菌」。なぜ粘菌だったのかがずっと疑問だったけど、この本を読んでやっと納得ができた。この世界の理を知ることにつながっているのだそうだ。
豪放磊落とは、この人のことだ。そして、博覧強記の人。こういう素晴らしい、奔放な才能を、受け入れられない社会が本当に歯がゆいし、今もその状況が変わらないことが残念でならない。

この本の、会話文がとても好きだ。そばにいて聞いてきたのかと思うような生き生きとした会話、口癖のような言い回しや方言のお陰で、人物像がありありと浮かび、親しみが湧いてくる。だから、熊楠先生が窮地に陥るたび、こちらまで地団駄を踏むような気持ちになってしまう。少しでも、自分の努力が報われたと思う瞬間がたくさんあるように、と願いながら読んだ。

2019年6月24日

読書状況 読み終わった [2019年6月24日]
カテゴリ 読書記録

貝原益軒の「養生訓」や「和諺」を引きながら、健康で充実した人生を送るためのあれこれを綴った指南書。実は再読なんだけど、内容をあんまり覚えてなかった割に、私が普段心がけてることが次々出てきて少なからず驚いた。きっと前回読んだあと、しっかり自分の中に根付いて、もはや当たり前になってしまったんでしょう。食事の仕方、心の持ち方など、軽やかに健やかに過ごすためのわかりやすいヒントがたくさんある。
江戸時代にこれほどの栄養学の知識があるっていうのも驚き。あと、益軒の執筆量にも驚く。こういう指南書は、江戸時代にも需要があったんだなあ、と江戸時代の出版事情を考えるのも面白いです。

2019年5月28日

読書状況 読み終わった [2019年5月28日]
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随分前に読んだのに覚えてないなあ、と再読。すると一気に物語の世界にとりこまれ、あっという間に読了!登場人物の個性と、物語の仕掛けが面白くて。
一度読んだから、ハッピーエンドになるのは知ってるのに、「うわ、魔女ひどい。どーすんのこれ…」と何度もドキドキしてしまった。最後は出来すぎかも知れないけど、でも、この呪文がうまくいきますように、と願わずにはいられなかった。子供はもちろん夢中になるだろうし、大人は、作中の子供や老人の気持ちにハッとして、現実の我が身を振り返る、という機会にもなると思う。
まあ、あんまり客観的にならずに、物語の世界を存分に楽しむのが一番だとおもうけどね。

2019年5月18日

読書状況 読み終わった [2019年5月18日]
カテゴリ 読書記録

タイトルを見て、愉快な話なのかな、と思ってたんだけど、全然違った。どれも短編なのに、人間の深くて複雑な心情が描かれていて、かなりの読み応え。中国古典を下敷きにしたサイドストーリーが描かれているので、もう一度古典の方も読みたくなってくる。
最後の「父司馬遷」は、父に軽んじられていた娘が、落ちぶれた父を鼓舞する話で、何というか、人間の強さを感じてグッと来るものがあった。
重厚なのに読みやすい、色んな人に勧めたい本です。

2019年5月16日

読書状況 読み終わった [2019年5月16日]
カテゴリ 読書記録

「この話、かわいいから!」と熱心に勧められて手に取りました。初の伊坂幸太郎です。
しっかりしたミステリーでストーリーも面白いけど、車の感情表現が、なるほどかわいい。ワイパー動くよね、とかピストンが上下するとか、車の動きをうまーく使って車達の気持ちを描いてて、そういう細かいところでクスクス笑えます。最後は少し切ないなあと思ったけど、ラストで弟くんが良い働きをします。読後感がとてもよいので、おすすめです。

2019年5月10日

読書状況 読み終わった [2019年5月10日]
カテゴリ 読書記録

小川洋子さんのちょっと不思議な物語と、クラフト・エヴィング商會が作る美しい作品との組み合わせが絶妙です。コレクションとして、ずっと手元に置いておきたい本。でも、こういうものにワクワクできる感性が鈍ってる気もしていて、もう少し若い時に読みたかったなと思ったり。

2019年3月25日

読書状況 読み終わった [2019年3月25日]
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確かにこれは理想形。社会を牽引する大人を育成する、というのが大学の、役目ならば。私の関心は、もう少し一般的なレベルの学生がいかに学ぶか、もっと言えば、学びたい気持ちになれるか、というところなので、別のものを模索した方が良さそう。ただ、こういう新しいことを起こすとき、技術開発のあたりは、どうしてるんだろうというのが気になる。どんな技術があればいい、とかすでにこんな技術がある、とか相当リサーチがいると思うんだけど、そういうところを知りたい。

2019年3月13日

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読書状況 読み終わった [2019年3月13日]
カテゴリ 読書記録

繰り返し,繰り返し,須賀敦子さんの文章の魅力を解き明かす。でも全部がわかるわけでもない。「古いハスのタネ」というエッセイ,私は読んだ時によく意味が読み取れなくて,どう読んだものかと思っていたのですが,この本でも難しい,と評されていてちょっとホッとした。宗教的なバックグラウンドや想いはやはり,ちょっとやそっとではわからない。でも,この本を読んであらためて,須賀さんの文章の魅力が言語化されて,自分でも少しすっきりした。事実を書いていると思われているエッセイに宿る,小説性,物語性とそこから感じられる,登場人物への共感(もしくは投影)と。
いつも,須賀さんの文章を読むと,映画のようにすっとその人物の話に入り込めるので,なぜだろうと思っていたけれど,人物の「物語」が語られているので,知らない人のことでも読めてしまうんだな,と。あとはその独特の文体について。須賀敦子さんの文章は,読むこと自体が心地よい。そう感じる理由につて,色々書かれていた。
うまく言えないけど,須賀敦子さんの文章の魅力を感じることができる自分を,少し誇らしく思った。

2018年12月30日

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読書状況 読み終わった [2018年12月30日]
カテゴリ 読書記録

須賀敦子さんと酒井駒子さんという,私にとって夢のような組み合わせ。思ったとおり,端正な文章と,愛らしい中にも静けさのある絵がぴったりで,世界に引き込まれてしまった。
こうちゃんは,誰なんだろう。何なんだろう,と考えて,自分の中に残る子供の頃の心なのか,なれなかった私なのか,影(ユング心理学でいうところの)なのか,などと思ってみたけど,もはやそういう追及をするのは野暮だな,と。
22の哲学者の話がとても好きで,言葉や理論で納得するのではないところで感じる,ちくっとする感じ,それを大事にしたいと思いました。
「こうちゃん」を読む直前,須賀敦子さんが,生涯の最後に書こうとして書けなかった小説がある,ということを知り,とても残念に思っていた。でも,「こうちゃん」というエッセイではない物語が,ごく初期に書かれていたことで,なんだか救われたような気がした。

2019年1月4日

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読書状況 読み終わった [2019年1月4日]
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過去から現在へ、物語が流れているのかと思っていたらそれは誰かの回想だったり、別の人物の語りだったりして何が本当か見えない。それなのに、そこに描かれる情景は鮮やかで、手に取るように登場人物の姿が見える気がする。
退廃的な空気、情熱的な、自分では制御できない感情、そしてアクシデントの数々。そういったものが次々と描かれて、映画を見ているよう。キャスティングしたくなる。ボルンは、ゲイリー・オールドマンのイメージなんだけど、どうだろうか。

2019年2月6日

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読書状況 読み終わった [2019年2月6日]
カテゴリ 読書記録

全国大学ビブリオバトル2018で紹介された本。童話,寓話のようで,ラストは予想通りですが,全体の物語の情景がきれいで,絵にしたくなる感じ。小学生,中学生あたりで読むと,心に響いて忘れられない一冊になると思います。説教臭く語られると反発したくなることも,物語だと入りやすい好例。ただし,大人の場合は,そこまで響かないかも。

2018年12月24日

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読書状況 読み終わった [2018年12月24日]
カテゴリ 読書記録

ちょっと情報が古いけど,そこがまた面白かったりします。頑固なパリの人々,というイメージのままのエピソードがあって,当時の日本の人が読むと,けっこうカルチャーショックだったろうな,と想像します。今のパリの人が読んだらどういう反応するだろう?
今の時代には当てはまらない雑学もあるとは思うけど,根底にある文化として認識しておくと,今のパリについてもかなり理解がすすみそう。

2018年12月20日

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読書状況 読み終わった [2018年12月20日]
カテゴリ 読書記録

図書館がどうあるべきか,今後どう進むといいのか,という課題に直面していて,その時に,図書館の枠組みの中で考えていても突破できないわけで。という状況の中,トップを走っている人の情報の使い方を詳細に聞き取りしているこの本はかなり面白くヒントもあった。さらに言うと,図書館について,だけでなく,仕事のやり方,イノベーションの起こし方など,ビジネス書としても読み応えあり。
さらっと読んでふむふむ,と思って終わらせちゃったけど,もう少ししっかり読み直そう。

2018年12月4日

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読書状況 読み終わった [2018年12月4日]
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映像が頭にどんどん浮かぶ。面白かった!個人的に,鳥居はさるお笑い芸人をイメージしてたんだけど,映画はまさかの女性設定だったのですね。見てないけど。映画の方も見てみたいな。

2018年11月30日

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読書状況 読み終わった [2018年11月30日]
カテゴリ 選書済

思った以上に面白かった。ライトノベルにありがちの女子設定やなー,と最初はちょっと構えてたんだけど,古本の話が出てくると俄然面白いし,事件がなんというか,いい話なので,ミステリーだけど嫌な気持ちにならない。
中高生や大学生がよくオススメしてくるのがわかるなあ。たしかにこれならシリーズで次々読みたくなるね。

2018年11月17日

読書状況 読み終わった [2018年11月17日]
カテゴリ 読書記録

ヨシタケシンスケさんの絵本はこの本から生まれた,ということで,特別にヨシタケさんの表紙カバーがついているのに惹かれて購入。それだけでなく,以前から「目の見えない人はどんな夢を見てるんだろう?」とか自分では想像つかない世界に興味があったので,「これは!」と思ったのでありました。
目の見えない人といっても,程度の差があってこの本に書いてあることがその全てではない,というように,全編「断定」してしまわない姿勢にまずは好感が持てました。優劣をつけたり,正否をつけたりしない。そこに,想像力の働く余地があり,他者を受け入れる余地があり,共存できる余地があるなあ,と。見えない人の,私たちにはできない認知方法の良さを述べますが,見える人が劣っている,という話ではない。見えない人に配慮して世の中を作りかえろ,とかそういう話でもない。おたがいの認知方法なり,過ごし方を知り,足し合わせていくことで,両方の世界が広がるのではないかという提案。見えない人と美術鑑賞をする「ソーシャル・ビュー」などはその典型で,すごく興味深いと思いました。体験してみたい。ソーシャル・ビューは,読書に似てるな,とも思えて,自分の中に鑑賞物を再構築する作業であり,豊かな世界を一つ,自分の中に作る作業なんだろうな。
というように,キーワードは「面白い」だと言います。「障害」(本書にならってあえてこの字を使います)をアンタッチャブルにしてしまわず,「そういうこともあるのか,面白い」と受け止められることで,ぐっと世の中生きやすくなるのではないか。そしてそれは,障害者と健常者の間だけでなく,一般的に言えることなのではないか,とも思えて「深いなあ」としみじみしたのでした。
と,もっぱら個人レベルの話を書いているけれど,この本ではもっと社会的なことも書いてあり,そういう意味でもよく配慮された本だな,と感じました。

2018年10月22日

読書状況 読み終わった [2018年10月22日]
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なんて美しい本。
子供の時の、一度失ったら二度と戻って来ない感覚が結晶しているような。その結晶の中から世界を見ているような。
そこに、意味とかストーリーとかを求めたら消えてしまう、ただ流れる感覚の波をゆったり味わいたい。そして、やっぱり何かを失くし続けてることに気づいて、哀しみを覚えたりする。

2018年10月20日

読書状況 読み終わった [2018年10月20日]
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これまで,とりとめなく須賀さんのエッセイを読んでいて,時系列のあちこちに空白地帯があったのだけど,これを読んである程度埋まったように感じた。
人間は,誰でもどこか欠けたところがあって,問題もあるし,難しい。でもだからこそ愛おしいし,忘がたい。欠けたところがあるのがいい,とも言わず,もっと良くなろう,とも言わず,ただ,日々を真摯に生きている人たちの人生を静かに見つめている。あえてものがたりを作らなくても、人の中に物語はあって、それを、事実を淡々と述べることで明らかにしていく。物語になっていく。そこに深いドラマを感じることができるのは,須賀さんの,ドラマを見つける力のせいなのかも知れない。
人生の数年をすごしたイタリアの土地と人と,その後も長く深く付き合える須賀さんの人間性にあらためて感じ入ってしまった。

2018年11月5日

読書状況 読み終わった [2018年11月5日]
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三浦しをんと言う人は、「新しい絆を作ること」を隠れテーマとして繰り返し書いてるなあ、と常々思っていたのですが、これはまさにそれがストレートに現れさた小説。明るくて愉快で、おとぎ話のようだった。でも、面白いけど、いつもよりはグイグイ引き込まれる感じではなかったかな?作為的すぎるのか…。これを読む前に読んでた本が静かでリアルな本だったので、落差についていけなかっただけかもしれないが。ラストに向かって収束するあたりはさすがに面白かった。最後は少し、じわっと来ます。

2018年9月28日

読書状況 読み終わった [2018年9月28日]
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過去のイタリア生活、過去の読書体験、読んだ本の著者の体験、が、同じ地平で語られていて、不思議に、隣で聞いて追体験している錯覚に陥る。作者の思い出の映像を見ているかのよう。声高に感情を煽るような、感動を強要するようなことは一つもなく、それなのに作者の見た景色、交わした言葉の淡々とした記録だけで、こちらの気持ちが動いてしまうのは何故だろうか。いつも、須賀敦子さんの本を読むと説明不能の感動を覚えるのだが、今回は、解説がとてもよくて、「そう!そうなんだよなー、私の気持ちを代弁してる!」と不遜ながら感じた次第です。須賀敦子さんの魅力を多少なりとも理解できる人間であることを、誇りに思おう。

2018年9月15日

読書状況 読み終わった [2018年9月15日]
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