前から私の周囲の人たちの中でよくおススメされた本。地味だし、なんかテーマが重そうなので読んでなかったけど、思い立って読んでみたら、、、地味どころではない、読み応えのある作品だった。自然の猛威の中でなすすべのない(いや、色々試みるんだけど太刀打ち出来ない)、極限状況の人間の、無力さ、浅はかさ、そして哀しみ。人間を軽々しく扱ってしまう「組織」の愚かさ、醜悪さ。日本の歴史の中で確かにあった事実を、ことさらに大げさにせず、淡々と書いていくことで一層重く深く読ませる文章の力。そういったものが幾重にも重なって、読む楽しみを増す。
この中で一番印象的だったのが、さわ女が第三十一聯隊を案内するシーン。ふわふわと雪の中を歩く姿の描写が美しく、重い内容の中で、ここだけ光が灯ったように感じる。兵士にとっても守り神に見えたのではないか。最後まで、多くの兵士の無念の思いばかりが胸に迫る中、さわ女の存在があることで少し救われた気持ちになった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
読書記録
- 感想投稿日 : 2019年7月17日
- 読了日 : 2019年7月17日
- 本棚登録日 : 2019年7月17日
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